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広島平和ミッション 「和解」の道を探る旅(社説) '04/3/23

 被爆体験の風化が叫ばれて久しい。そうした中、核保有国や紛争地域へ市民と記者を派遣する「広島世界平和ミッション」(広島国際文化財団主催)の第一陣が二十五日、広島を出発する。被爆の実相を伝えることにとどまらず、人々が憎しみを乗り越え、和解に至る道を探る。二十一世紀に広島・長崎が果たすべき新たな役割を見いだしてほしい。

 平和を願う被爆者たちの間で早くから交わされてきたのは「ノーモア・ヒロシマ」である。人類史上まれな悲惨な体験をしながら、むしろそれ故に、多くの人々は際限のない報復の連鎖でなく「他人が同じ目に遭ってはならない」と和解を展望した。人類の歴史や未来に思いをはせ、国の内外に出掛けて語り合い、輪を広げてきた。

 ちょうど四十年前、故バーバラ・レイノルズさんが被爆者たちと世界八カ国を回った「広島・長崎世界平和巡礼」もそうした行動の一つ。ミッションは、レイノルズさんの思いも引き継ぐ。

 第一陣の目的地は南アフリカ、イラン、イスラエル、パレスチナの三カ国一地域で、訪れる市民は六十九歳の被爆者から二十一歳の大学生まで五人。原爆資料館の案内ボランティア、パレスチナの子どもたちに医薬品を贈る活動を担う薬剤師、大学研究者など、さまざまな体験や活動実績、平和への熱い思いを持つ。中国新聞の記者二人が同行する。

 最初に訪れる南アは、アパルトヘイト(人種隔離)を廃止して核兵器を捨てた後、核軍縮に取り組む「新アジェンダ連合」の中心的存在として知られる。一行は大学や小学校でミニ原爆展を開き、被爆証言などを含めた交流会を重ね、政治指導者や反核グループとも話し合う。人種隔離の後遺症は残っていないのか、融和は進んでいるのか、なぜ核兵器を保有し、そして廃棄することができたのか、学ぶべきことも多い。

 イスラエルでは、同じように悲惨な体験を持つ者同士で、共通する思いを引き出せないだろうか。パレスチナとの双方の犠牲者の家族でつくる「イスラエル・パレスチナ遺族の会」からは「広島は、あるいは日本は、この地域で平和のためにもっと活動する余地がある」と、訪問を歓迎する電子メールが届いている、という。

 多くの市民から支援が相次ぐ。ミッションを支える会が中心となって集めている募金は、三月中旬に三百三十万円を超えた。東京芸術大学長の平山郁夫さん、女優の吉永小百合さんたちからも賛同のメッセージが寄せられた。事務局に折り鶴を持ち込んだ子どもたちもいる。

 「戦争の世紀」と呼ばれた二十世紀は終わったが、イラク戦争を見るまでもなく二十一世紀になってテロをはじめ暴力の形はより複雑になっている。

 ミッションは来年にかけ欧米やインド、パキスタンなどへ向かう。多くの訪問先は戦火と憎しみが交錯する。政情も厳しい。行動にはさまざまな制約も予想される。無力感にさいなまれる日もあるだろう。しかしそれをかみしめるのも糧につながるはずだ。異なる意見の人々とも対話し、過酷な現実を見詰めてほしい。


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