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■特集 米国編 エノラ・ゲイの残像
核時代 扉開いた象徴 原爆被害の説明なし '05/6/21


 核超大国の米国を平和行脚した広島世界平和ミッション(広島国際文化財団主催)の第六陣一行は滞在中の四月、広島に原爆を投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」にまつわる二つの施設に立ち寄った。

 一つはユタ州のウェンドーバー空港。米陸軍第五〇九爆撃混成団所属のエノラ・ゲイの乗組員は、ここで原爆投下の訓練を受けた。

 原爆の訓練開始に伴って二万人が駐留。砂漠の中にこつぜんと「町」が現れた。しかし今、その面影はない。滑走路の大部分は砂に覆われ、格納庫の天井は朽ち果てて青空がのぞく。時折、ネバダ州のカジノ目当ての客を乗せた民間チャーター機が利用する程度だ。

 地元自治体は博物館への再整備を始めた。見学者に地方の「輝かしい歴史」ではなく、「人類の教訓を学ぶ施設にしてほしい」と、メンバーは期待する。

 もう一つはエノラ・ゲイの機体が展示されている首都ワシントン郊外のスミソニアン航空宇宙博物館の新館。復元され、かつての輝きを取り戻した銀色の怪鳥は、他の戦闘機を従えるようにフロアを占めていた。

 広島の原爆被害に関する説明は一切ない。見学する大人も子どもも、巨大な姿にただ感嘆の声を上げる。その表情はまるで、エノラ・ゲイから投下された一発の爆弾が、一九四五年末までに約十四万人の命を奪った歴史など頭に浮かばない様子だった。

 あの日から六十年。米国内では、戦争を終結させた偉業として原爆をとらえる風潮が、一層強まっている。核兵器のうえに平和を築こうとする姿勢は、テロや「ならず者国家」という新たな脅威に小型核兵器で対応しようとするブッシュ現政権への支持にもつながる。

 「エノラ・ゲイは、全人類を脅かす核時代の扉を開いた象徴」。そんな視点から歴史を見つめ直してもらいたい。メンバーとともに、そう願わずにはいられなかった。 (文・岡田浩一 写真・松元潮)


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