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核廃絶へ行動訴え 被爆60年式典 '05/8/6


 ■継承 目覚め 決意のとき

 米国が投下した一発の原子爆弾に焼かれ、廃虚となってから六十年。広島市は六日、中区の平和記念公園で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。節目の年に、昨年より一万人多い五万五千人(市発表)の被爆者や遺族、市民らが参列し、あの日を思わせる強い日差しのもと、あまたの犠牲に追悼の祈りをささげた。秋葉忠利市長は「平和宣言」で、被爆者の記憶の継承と核兵器廃絶への行動を誓った。

 せみ時雨が響き続ける午前八時、式典は原爆死没者名簿の奉納で始まった。秋葉市長と二人の遺族代表が、この一年間で亡くなったり、新たに死亡が確認された五千三百七十五人の名前を記した二冊の名簿を原爆慰霊碑に納めた。名簿はこれで八十五冊となり、二十四万二千四百三十七人の犠牲を刻む。

 原爆投下時刻の午前八時十五分。気温二八・三度。額から汗が噴き出す。遺族代表の市職員坂本綾さん(40)=西区=と、こども代表の温品小六年藤田健君(11)=東区=が「平和の鐘」をつく。水を求めて亡くなった犠牲者を悼み、参列者は一分間の黙とうをささげた。

 続く平和宣言で秋葉市長は、核を保有したり保有を願う国を「世界の大多数の声を無視し、人類を滅亡に導く危機に陥れている」と批判。二〇二〇年までの核兵器廃絶に向け、市民とともに行動を起こすことを誓い、今後一年間を「継承と目覚め、決意の年」と位置付けた。

 続いて、こども代表の本川小六年の岩田雅之君(11)=中区=と、口田小六年の黒谷栞さん(12)=安佐北区=が力強く「平和への誓い」。二十四年前の一九八一年、この地でローマ法王の故ヨハネ・パウロ二世が発表した「平和アピール」を引用しながら、被爆体験の継承と平和な世界実現への決意をうたいあげた。

 被爆六十年の節目とあって首相、衆参両院議長、最高裁長官の「三権の長」があいさつ。五年連続の参列となった小泉純一郎首相は「平和憲法を順守し、非核三原則を堅持する。核兵器の廃絶に全力で取り組む」と述べた。

 平和宣言骨子


 ●未来世代への責務として「子どもを殺すなかれ」を人類最優先の公理として確立する必要がある

 ●核保有国や核保有願望国は「力は正義」を前提に、世界の大多数の声を封じ込めている

 ●国連総会の第一委員会(軍縮)が、核兵器のない世界の実現と維持を検討する特別委員会を設置するよう提案する

 ●二〇二〇年までの廃絶を実現するため、国連総会が二〇一〇年までにその具体的ステップを策定するよう期待する

 ●向こう一年間を「継承と目覚め、決意の年」と位置付ける

 ●日本政府には、高齢化した被爆者の実態に即した温かい援護策の充実を求める

 ●原爆犠牲者に哀悼の御霊(みたま)をささげる。「安らかに眠って下さい。過ちは繰(くり)返しませぬから」

【写真説明】核兵器廃絶の日まで燃え続ける「平和の灯」。奥の式典会場では、60年間続く原爆の犠牲を悼み、慰霊碑に花を手向ける列が続いた=6日午前8時10分、広島市中区の平和記念公園 (撮影・浜村和義)


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