今年一月に七十一歳で亡くなった広島市西区出身のイラストレーター山下勇三さんが、原爆への怒りと悲しみを込めて作詞した曲「広島の川」を、友人たちが新たに録音し、八月六日、CDとして再発売する。(北村浩司)
「広島の川」は、広島デルタを流れる六本の川を広島弁で数え歌風に読み込んだ。「元安川 ピカドン川じゃけん 盆にゃ涙川」と歌い、「朝の満ち潮にゃねェ 昼の引き潮にゃねェ ピカドンの恨みが流れとるんじゃ」と締めくくる。
歌手中山千夏さんと音楽家佐藤允彦(まさひこ)さんが出演していたラジオ番組で、二人の友人の山下さんに作詞を依頼し、佐藤さんが曲を付けて生まれ、一九七五年に中山さんの歌でレコードにもなった。
今年三月、山下さんをしのぶ会で中山さんが歌い、友人の間で「この曲をもう一度広めよう」という声が起きた。山下さんと大学で同級生のイラストレーター和田誠さんがプロデュース、中山さんの歌、佐藤さんのピアノで再録音が実現した。B面には、広島の街の思い出を山下さんが詞にした「横丁を曲がりゃ」を収録した。
山下さん自身は疎開先で被爆を免れたが家族が被爆し、兄が大やけどした。美術大を卒業後、小説の挿絵や食品の包装デザインなどで活躍、原爆ドームを描いたポスターなども制作した。和田さんは「歌の通り、常に故郷への愛と平和への願いを持ち続けた」と振り返る。
八月六日に広島市中区の中国新聞ホールで開かれる原水禁世界大会の特別集会でも、中山さんが歌う。CDは千五十円。ディスク・クラシカ・ジャパンTel03(3423)2340。
【写真説明】故山下勇三さんが作詞した曲を録音するために音合わせする、左から中山千夏さん、和田誠さん、佐藤允彦さん
    
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