学徒動員中に原爆の犠牲になった旧制広島市立中の生徒を悼む六日の慰霊祭の運営が、今年から、学校の歴史を継承する基町高の同窓会に引き継がれる。三十五年間、鎮魂の営みを続けてきた旧制中の卒業生たちの高齢化に伴い、後輩たちが継承に乗りだした。(森田裕美)
中区の基町高にある同窓会事務局で、被爆当時、市立中二年だった石田晟さん(76)=廿日市市=が昨年の慰霊祭の写真などを広げた。準備や当日の進行の説明に聞き入る基町高卒業生八人は真剣なまなざしを送った。
石田さんは疎開先にいて難を逃れた。だが、現在の西区中広町にあった学校にいたり、爆心地から約九百メートルで建物疎開作業をしたりしていた三百人以上が命を落とした。
慰霊祭はもともと遺族を中心に営んでいたが、高齢化に伴い一九七〇年代、石田さんや生き残った同級生らが引き継いだ。そのメンバーも今はよわいを重ね、亡くなったり、病気で動けなくなったり。石田さんも今年は参列できそうにない。
以前から手伝ってもらっていた基町高同窓会に全面的に託すことにした石田さんは「『生き残り』からの伝承事」と題する資料を作り、配った。「私たちも、老いた遺族の思いを引き継いだ。心がつながっていればうまく継承できる」
バトンを渡された同窓会長の天倉国博さん(60)=佐伯区=は「先輩たちが支え続けた大切な行事。その気持ちを大事にしてしっかりと引き継ぎたい」と決意を新たにする。
【写真説明】基町高校の卒業生たちに慰霊祭運営の心構えを伝える石田さん(右端)
    
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