中国新聞社
2011ヒロシマ
'11/7/27
【天風録】折り鶴の心

被爆地のほかに折り鶴の届く街がある。杜(もり)の都・仙台はその一つだ。毎年8月6日から始まる七夕まつり。呼び物の豪華絢爛(けんらん)な吹き流しに交じり、全国各地の人たちが寄せた鶴の巨大な束も一緒に飾られてきた▲仙台七夕の始まりは江戸時代にさかのぼる。くしくも原爆の日と重なった。「核廃絶への行動も」と市民有志が鶴を持ち寄ったのは35年前のことだ。当初の2千羽は口コミで増え続け、最近は100万羽を超す。さぞ見応えがあるに違いない▲東日本大震災に見舞われた今年は、飾り付けも危ぶまれた。担い手の一人は津波にのまれた。自宅が壊れた人も少なくない。復興への思いを託そうと何とか立ち上がったという。鶴は例年に負けないほど各地から届いた。ボランティアたちが束ねる作業に汗を流していると聞く▲千羽鶴に病気回復の願いを込めたのが2歳で被爆した佐々木禎子さんだった。折り鶴は平和を求める子どもたちのメッセージとして世界中に広がっている。いま被災地では再生と希望のシンボルにもなりつつあるようだ▲宮城県内に立つ仮設住宅の集会所にも近く、広島から4千羽が届けられる。こちらは被災者を励まそうと主婦やお年寄りが丹精込めた。近づく8・6。かの地を彩る折り鶴にも思いをはせたい。

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