中国新聞社
2012ヒロシマ
'12/8/7
核廃絶へ指導力見えず 首相、関心の低さ露呈


 野田佳彦首相は6日、就任後初めて広島市の平和記念式典に出席し、被爆者に会うなど例年通りの「首相日程」をこなした。ただ、社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け突き進む姿と違い、核兵器廃絶、被爆者援護策で指導力を発揮したと言えず、関心の低さも透けて見えた。

 首相は式典後、中区のホテルで「被爆者代表から要望を聞く会」に臨んだ。

 「核兵器のない世界」へ「国際社会の先頭に立つ」と明言したが、挙げたのは非核兵器保有国10カ国の「軍縮・不拡散イニシアチブ」の活動や国連総会への軍縮決議案提出など、新味のない内容ばかり。式典あいさつで強調した「被爆体験の伝承」の具体策も語らなかった。

 菅直人首相は初出席した2010年、国内外で被爆体験を語る「非核特使」構想を打ち上げた。自公政権時代の09年には、麻生太郎首相が原爆症認定集団訴訟の解決へ道筋を付ける「舞台」となった。野田首相に近い国会議員たちは、被爆者援護や核兵器廃絶に「首相の関心は高くない」と口をそろえる。

 「黒い雨」の援護対象地域の拡大も、厚生労働省の見解を基に否定。演説上手の「野田節」は聞かれず、原稿を読む姿が目立った。

 広島県被団協の坪井直理事長(87)は聞く会終了後、首相が原爆症認定制度の見直しに意欲を示した点だけ「強い決意を感じた」と持ち上げた。もう一つの県被団協の金子一士理事長(86)は黒い雨について「引き下がれない」と早期の政治決断を求めて譲らない。

 首相は広島日程の最後、安佐北区の原爆養護ホーム「倉掛のぞみ園」を見舞った。「みなさんが安心して暮らせる社会をつくるため全力を尽くす決意を新たにした」。ホールに集まった約80人を前に述べて、東京に戻った。(岡田浩平、和多正憲)

【写真説明】被爆者団体の代表(右列)と向き合う野田首相(左列手前から3人目)=広島市中区(撮影・福井宏史)



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