原爆の日を前に語り部継承・被爆建物の見直し
'98/7/27
来月六日の「原爆の日」を前に二十六日、広島市中区の平和大通 りや平和記念公園一帯で、原爆の遺跡や慰霊碑を訪ねる催しがあっ た。語り部継承や被爆建物の見直しに向けた新たな試み。雨の中、 五十三年前から刻まれるヒロシマの惨禍に思いをはせた。
▽1期生デビュー 語りべボランティア
広島市中区の竹屋公民館で、原爆慰霊碑の語り部ボランティア講 座を受けた一期生九人はこの日初めて、平和大通りから平和記念公 園、本川小までを案内して歩き、それぞれの碑が語りかける願い、 無念さを、自分たちの言葉で伝えた。
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慰霊碑を通して平和を考える活動は、十九歳で被爆した久保浦寛 人さん(72)=東区光町一丁目=が長年続けてきた。昨秋からは講師 となり、後継者の育成にも力を入れている。
市民やボランティアを含む計二十人が参加。平和大通り緑地内に ある移動劇団さくら隊殉難碑や、若くして犠牲となった学生、労働 者を悼む碑、原爆ドームなど二十カ所を訪ねた。
二十代から七十代までの“新人”語り部たちは、久保さんに助け 船を出してもらいながら交代で説明。「原爆は許さない」などと言 葉をつないだ。
三カ所でマイクを握った団体職員、玉置和弘さん(30)は「もっと ヒロシマを学び、次世代に伝えたい」。聞く側で参加した中区国泰 寺町一丁目、主婦末安エミ子さん(56)は「原爆の恐ろしさを、県外 で暮らす子や孫に話します」と熱心にメモしていた。
広島大教職員組合霞支部(高木昭輝支部長)は、平和記念公園一 帯で、原爆遺跡・碑めぐりツアーを開いた。
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▽広島大教職員組合がツアー 被爆建物見直し
旧理学部二号館(中区)など大学が所有する被爆建物を見直す狙 いで、今回が初めての取り組み。霞キャンパスにある医学部、歯学 部の教職員をはじめ、大学生協職員ら十三人が、雨の中を参加し た。
原爆放射能医学研究所の宇吹暁助教授がガイド役を務め、原爆ド ームを出発点に、七十四カ所の慰霊碑やモニュメントを巡回。動員 学徒慰霊塔や原民喜詩碑をはじめ、原爆投下目標になった相生橋や 市レストハウスなど市観光協会のガイドマップに載っていない遺跡 を丹念に見て歩いた。
参加者らは、原医研による爆心五百メートル圏内の原爆被災復元調査の 資料も参考にしながら、石碑に刻まれたヒロシマの歴史を感じ取っ ていた。歯学部の看護婦菅田智子さん(40)=安芸区矢野南四丁目= は「身近に感じてきた平和公園に、平和への願いや無念さが、これ ほど多く込められていたとは」と話していた。
【写真説明】(上)慰霊碑に刻まれた思いを参加者に語る、市民の語りべボランティア (下)雨の中、平和記念公園一帯にある原爆遺跡を見て歩く広島大の教職員
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