広島市の被爆医師が反核のエッセー出版
'98/7/30
生命を守る医師の立場から反核運動にかかわる広島市東区牛田本 町四丁目、内科医碓井静照さん(61)が、核廃絶を訴える英文エッセ ー「OBSERVATIONS」と、日本語版の「語り継ぐ夏」を 相次いで出版した。被爆医師として反核への思いをつづっている。
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核戦争防止国際医師会議(IPPNW)日本支部理事の碓井さん は、八歳のとき爆心から二・四キロの現在の自宅で被爆。この時の体 験や後に旧ソ連・ベラルーシのチェルノブイリ原発事故被災地を訪 れた時の体験をまとめ、既に二作のエッセー集(日本語版)を発刊 している。今回はこれにインド、パキスタンの核実験など最近の動 向を加えて書き下ろした。
著書では、印パの核実験を「南アジアの緊張をますます高めるこ とになった」と批判。米ソがけん制し合った冷戦時代と違い、印パ 両国は「核戦力を破壊される前に先制攻撃しようという衝動が働 き、核の引き金に手をかける可能性は十分にある」と憂慮する。
一九九二(平成四)年には同じ旧ソ連のカザフスタンを訪れ、有 力政治家や政府高官と面会。中国など核保有国に囲まれた同国が旧 ソ連時代の核を廃棄できずにいる現状を聞かされた体験も記してい る。
碓井さんは「印パの核実験で核廃絶への道が踏みにじられた。ヒ ロシマの医師として被爆の実相を世界に伝えなければ、と思った」 と話している。
B6判、英文百六十五ページ、和文二百八十ページ。発行元はガリバープ ロダクツ(広島市中区紙屋町一丁目)で、どちらも一部千円。日本 語版は八月五日から書店に並ぶ。
【写真説明】核廃絶を願い、日英両語でエッセーを出版した碓井さん
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