旧制広島高の同窓生、生徒動員日誌刊行
'98/7/30
被爆五十三年の原爆の日を前に、旧制広島高校(現広島大)の同 窓生が「生徒動員日誌」を刊行した。今年創立七十五周年を迎える 広島高同窓会が記念事業として、約一年前から出版準備を進めてい た。生徒動員の引率教諭が残した日誌の原文を活字化し、難しい表 現には脚注をつけて若者層にも読みやすくしてある。
A5判、百四ページ。日誌の執筆者は、日本製鋼広島製作所(広島市 安芸区船越町)への生徒動員の引率教官だった故山下恒次・元教 授。一九四五(昭和二十)年七月五日―八月二十六日分を片仮名交 じりの旧仮名遣いのまま掲載してある。
八月六日の日誌には「十時頃、一般罹災者ト共二顔面・胸部ヲ真 赤ニヤケドシ、殆ンド裸体トナリシ広高生、広島方面ヨリ歩イテ帰 ヘリ来タレルヲ迎フ。全身ノヤケドニヒルマズ、寮歌ヲ高唱シ帰ヘ リ来タレルモアリ、凄惨」などとある。
当時の一年生約三百人のうち、日誌に百八十六人が登場し、約三 十人が爆死。手当てのかいもなく亡くなっていく生徒の様子などを 克明に記述している。「配給」「至急官報」などの用語には説明を 加え、人名索引も付けた。
日誌は昨年夏、静岡市内の古書店で見つかり、広島市教委が入手 した。日誌刊行会代表の松浦道一広島大名誉教授(84)は「被爆前後 の生徒の動きを克明に記録してあり、ドキュメント資料としても価 値がある。若い世代にも読んでほしい」と話している。
二千部印刷し、同窓生や市内の図書館などに寄贈する。問い合わ せは 電話082(251)9631(刊行会委員の神田照家さ ん)。
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