原爆で消えた街の住民が慰霊法要

'98/8/1

 原爆ドームがある広島市中区大手町一丁目の前身、旧猿楽町の元 住民らでつくる「矢倉会」(益本嘉六会長、百五十六人)は三十一 日、ドーム近くの広島県民文化センターで合同慰霊法要を営んだ。 作製した復元地図やアルバムを参列者に披露した。

 慰霊法要は昨年に続き二回目。県内在住者を中心に六十六人が集 まった。会場には祭壇が設けられ、八人が菊を献花。読経が流れる 中、数珠を持って手を合わせた。目を閉じて頭をたれる姿もあっ た。

 原爆で母を失った名古屋市南区、片山喜美恵さん(75)は、終戦翌 年に結婚して広島を離れた。近所の住民だった会員とは五十二年ぶ りの再会。「昔の顔がなかなか思い浮かばない」と懐かしい顔を探 していた。

 昨年も参加した横浜市港北区、菅原桂子さん(70)は「古里、猿楽 町の家並みが今も目に浮かぶ」と、復元地図に見入った。妹が爆死 した大竹市南栄一丁目、会社役員前田教人さん(81)も「温かさにあ ふれた猿楽町が忘れられない」と、幼なじみと話をしていた。

 矢倉会は、一九四〇(昭和十五)年ごろの猿楽町周辺を復元した 地図を二百部作って配布。披露されたアルバムには、会員らから集 めた戦前や戦時中の街並みなどをとらえた写真を張った。

 法要に先立ち、会員の田辺雅章さん(60)=中区十日市町二丁目= が五月に作製したハイビジョン作品「原爆ドームと消えた街並み」 を鑑賞した。

【写真説明】合同慰霊法要の会場で、アルバムを見ながら昔話をする矢倉会のメンバー


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