ヒロシマ あす「原爆の日」
'98/8/5
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ヒロシマは六日、被爆五十三年の「原爆の日」を迎える。イン ド、パキスタンが五月、相次いで核実験を強行し、新たな核ドミノ の危機が迫る。被爆地の役割は重みを増した。平岡敬市長は平和宣 言で、核廃絶への具体的ステップとして核兵器使用禁止条約の締結 を呼び掛ける。
被爆者健康手帳の所持者は三月末現在、全国で三十一万千七百四 人。一年間で五千九百二十九人減った。広島市内の所持者は九万三 千六百三十七人(男三万六千三百三十五人、女五万七千三百二人 )。平均年齢は六八・一歳で、昨年より〇・八歳上がった。
「生きているうちに核兵器廃絶を」。被爆者の切実な願いを印パ 両国の核実験が打ち破った。三月には、米国が三回目の臨界前核実 験を実施。核保有五カ国が核軍縮に真剣に取り組んでいない現状 が、印パの実験の引き金になったと指摘される。
核拡散防止条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT) を柱とする核不拡散の動きは止まった。日本政府も米国の「核の 傘」の下にあって、核廃絶の訴えには説得力を欠く。
こうした中、今年四月、前国連事務次長の明石康氏を所長に迎え て広島平和研究所が発足した。研究の一番手に「核廃絶への具体的 な道筋」を挙げる。今月末には、政府が提唱した「核軍縮・不拡散 に関する緊急行動会議」(国際フォーラム)の初会合が東京で開か れる。十一月の国連軍縮長崎会議では、アジア新核軍拡時代への対 応が大きなテーマになる。
印パの実験後、広島の被爆者も動きを強めた。しゃく熱の両国で 平和行脚をし、体験を証言した。この夏、例年になく、両国の市民 団体から平和資料の送付を求める要請が広島平和文化センターに届 いている。反核のうねりは着実に広がっている。
世界初の被爆地として、アジアの一員として、ヒロシマは南西ア ジアからの核拡散を防ぐ責務がある。核保有五カ国を核廃絶へと進 ませるためにも、体験の継承、核廃絶の訴えをさらに強め、具体的 な提案をして為政者を突き動かすことが欠かせない。
【写真説明】53回目の「原爆の日」を前にすっかり準備が整った広島市の平和記念公園
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