中国新聞社
99.5.6

 
池田 真規さん

日本反核法律家協会事務局長
池田 真規さん
築け非核市民ネット

〈上〉
 
目加田 説子さん

地雷廃絶日本キャンペーン運営委員
目加田 説子さん

「平和憲法の理念訴える」

 ハーグ平和アピールは、人類史を変える大イベントだと確信する。大げさではない。会議が掲げる「戦争も核兵器もない二十一世紀」との目標は、決して実現不可能ではないからだ。

 戦争と殺りくの二十世紀、私たちは戦争ではもう何も解決しないと痛感した。軍事による「国家の安全保障」のもろさ、愚かさを知った。その体験を踏まえ、国境をなくそうと模索する欧州連合(EC)が好例ではないか。

 「人間の安全保障」を考える時代なのだ。そうした世界の変革を担うのは、大国でも英雄でもない。今こそ民衆や中小国が世界を動かす時代が来た。それが可能なのかと疑問を持つ人は「核兵器は国際法違反だ」との勧告的意見を国際司法裁判所から引き出した世界法廷運動を思い出してほしい。その運動を担ったNGOが、今回の会議を準備してきた。

 戦争のない二十一世紀の規範をすでにわれわれは持っている。世界の人々が平和に生きる権利をうたった日本国憲法だ。私たちは会議で、この憲法の理念の普遍化を訴えたい。すでに南半球すべてを覆った非核地帯条約も、その理念を実現する一つの萌芽(ほうが)なのだ。

「核廃絶へ人道主義貫け」

 昨年の八月六日、広島に行きました。核兵器廃絶を願う人々の多さに感動した。でも、なぜ、その願いは実現しないのか。

 東西冷戦の時代、米国の大学院で国際政治を学びました。市民の軍縮への願いを骨抜きにしてしまう米ソ軍拡競争に対し「市民社会の役割」を研究してきた私が、TV局勤務を経て飛び込んだのが、地雷廃絶キャンペーンでした。

 わずか六つのNGOが始めた運動が対人地雷全面禁止条約へ結実したのは、「人道主義」の勝利。地球上で二十分に一人が死傷する地雷の非人道性を徹底的に訴えた。軍縮問題として取り上げれば、国家安全保障の論理が先立ち、失敗したでしょう。

 その人道主義を核兵器廃絶運動にも応用できないか。何十年にもわたって後遺症を残す核兵器の非人道性をもっと訴えられないか。それには、運動の求心力を高め、集中的に世論を喚起する短期の目標設定、政府を動かす綿密な戦略が必要。「核は私たちの暮らしと密接に関わっている」という想像力をかきたてる教育の役割も重要でしょう。

 ハーグであらためて核軍縮と各国の市民社会のかかわり方、運動手法を学びたい。


 〈ハーグ平和アピール〉1899年にハーグで開かれた第1回国際平和会議から100周年を記念し15日まで開かれる。印パ核実験から1年、コソボ紛争が泥沼化する中で、各国NGOから数千人が参加する世界最大規模の集会。「平和は人間の権利だ」「今こそ戦争を廃絶する時」をテーマに討論し、非核世界実現に向けた市民ネットワークの構築を目指す。日本からは約400人が参加し、原爆展も開く。

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