english
8.6探検隊

(23)きのこ雲には色が付いていた?

Q

原子爆弾の投下直後にできたきのこ雲に色がついていた、と聞きました。本当ですか。




A

赤・緑・紫…次々に変化

きのこ雲というと白か灰色の印象がある。違うとすると、白黒写真を見てそうだと勝手に信じ込んでいたのかもしれないね。

photo
自ら描いた色のついた雲の絵を手に、その様子を説明する田頭さん

広島原爆戦災誌第2巻には「上空数千メートルに達する大爆煙が、虹を溶いたようなあやしく美しい色彩を渦巻きつつ、キノコ状になってモクモクと湧き上がり、市の上空をおおった」と書いてある。

やっぱり色がついていたのかな。次に原爆資料館(広島市中区)の原爆の絵データベースを見てみた。「襲いかかってくるようだった」「何とも言えない恐怖だった」というコメントとともに、オレンジや紫で描かれた雲の絵がいくつかある。一方で白や灰色のものもある。

部分ごと違う色

実際に雲を見た人たちに聞いてみた。

爆心地から約13キロ南の江田島で国民学校教師をしていた田頭和憲さん(80)=広島市西区=は爆発直後、校舎の窓越しに雲を見た。「全体的に淡い色で紫、赤、青や緑もあった。部分部分で違う色だった」と記憶する。

きのこ雲を見ていたのは数秒間だったが、煙がふくらむように大きくなっていき、色も次々に変わっていったそうだ。

爆心地から約2・3キロ南東の自宅から比治山へ逃げる途中で雲を見た宮川裕行さん(78)=西区=も「全体がダイダイ、緑、黄、紫などの色のついた炎で覆われたようだった」という。「毒のある雲だと思い必死で逃げた。しばらくすると灰色になっていた」と振り返る。

そもそもきのこ雲ってどうやってできるのだろう。広島大大学院工学研究科の静間清教授(58)=原子核工学=に解説してもらった。

火球の膨張によって空気の圧力と温度が下がり水蒸気が水滴になるため、雲のように白くなる。そしてやはり気圧が下がったために周りの空気や水蒸気がそこに入り込んでどんどんふくらんでいく。さらに熱せられた地上と火球の間の空気が軽くなり上昇気流が起こる。これによりきのこ型になっていくんだそうだ。

火球や化学反応

色については次のように教えてもらった。

「火球が膨張し中心温度が下がっていくことで赤や黄などに徐々に変化し、できた『雲』を通してその色が見えるんです」

なるほど。でも紫や緑に見えたという人もいるよね。

静間教授は可能性として、原爆の材料として使われた鋼鉄やウランなどの金属が放射線と熱に反応しピンクや緑に発光したり、ガンマ線が周りの空気と反応して紫に似た光を発したりすることを指摘する。

そして「熱が下がり金属や空気の反応が終わると、白い雲になる。巻き上げられた地上の土やほこりで黒っぽい色に見えることもある」らしい。いろんな色になり、最後は白か灰色になったということだね。ナットク。(馬上稔子)