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アニメの平和力
 〜国境超えて、心を動かすよ。〜

フランスで平和運動を続ける美帆シボさんはアニメ「つるにのって」の原案者としても知られています。その製作のきっかけを「1980年代からフランスでは日本のアニメがかなり放送され、若者の成長に大きな影響を与えた。人気が根強いアニメの力で平和教育をしたいと考えた」と話してくれました。

今や日本の誇るべき文化となったアニメで、平和をテーマにした作品が多く作られています。その親しみやすさは被爆者が高齢化する中、若い世代に体験を伝える大きな役割を担っています。

原爆により失われた町並みをコンピューターグラフィックス(CG)で再現した作品もあります。広島市では2年に1度、世界中の最新作が集まる国際アニメーションフェスティバルも開かれています。16号はこのアニメの持つ力に注目しました。

今回から8人のジュニアライターが加わります。一部入れ替わり、計19人がパワーアップしてお届けします。

 
 

昨年の広島国際アニメーションフェスティバル=上映しているのは特別プログラムの長編作品「ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!」(©2005Dream Works Animation LLC and Dream Works LLC)
 国際フェスタ 国内外から3万人

アニメーションを通じて平和を世界に訴えるイベントが広島にあります。2年に1度開かれる広島国際アニメーションフェスティバルです。11回目だった昨年8月には58カ国・地域から1764作品もの応募がありました。国内外の観客約3万人が訪れ、作品の背景にある各国の文化に触れました。

フェスティバルは「愛と平和」をテーマに、被爆40年の1985年から、広島市や経済団体などでつくる実行委員会が開催しています。

30分以内の短編作品が対象で、応募は第1回の451から増え続けています。グランプリを受賞すると、米アカデミー賞短編アニメーション部門に自動的にノミネートされるなど世界的な注目度が増しています。

なぜヒロシマで開くのでしょうか。第1回から運営に携わるディレクターの木下小夜子さん(62)は「アニメーションとは、絵画や音楽、文学などその地域の総合文化。これを理解することが平和の基礎となる。被爆を体験したヒロシマは開催する場所にふさわしいと考えた」と説明します。

これまであまり知らなかったけれど、このフェスティバルの可能性を強く感じ、是非会場を訪れてみたいと思いました。(高3・新山京子)

 
 
 

CGで町並み再現 写真2万枚を基に


「爆心地〜ヒロシマの記録〜」ダイジェスト版
(ナック映像センター提供)

原爆で消えた町並みを復元したコンピューターグラフィックス(CG)があります。リアルな映像です。「こんな町が一瞬で消えたなんて」と、人の命や建物、生活など失われたものを実感できました。

映像制作会社社長の田辺雅章さん(69)は監督として、原爆ドーム(産業奨励館)や爆心地近くにあった旧猿楽町、細工町を復元した3本と総集編の計4本を10年かけて作りました。

当時を知る被爆者165人にインタビューしたほか、残された写真、全国の町並み保存地区で撮った写真2万枚を基に、家の材質まで調べたそうです。猿楽町に住み、父母と弟を亡くした田辺さんにとって、過去を思い出すのはつらく「本当はやめようと思った」そうです。しかし、映像を職業とし、当時の様子を知っているのは自分だけだという責任感から、家族同然だった昔の近所の人たちの協力も得て完成させました。

原爆を知らないすべての人に見てほしいと田辺さんは願っています。(中3・土田昂太郎)

 

田辺さんへのインタビューの様子です

 
 
 身近に感じる工夫 −「つるにのって」「アンゼラスの鐘」
 
左=「つるにのって」(©虫プロダクション)右=「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」(©「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」製作委員会)

外国で上映され、原爆被害や平和を訴えるアニメ映画「つるにのって」(1993年)と「NAGASAKI 1945 アンゼラスの鐘」(2005年)を観賞しました。いずれも有原誠治さん(59)=東京都=が監督・脚本をしました。

「つるにのって」は主人公の女の子が「原爆の子の像」から現れたサダコちゃんと話しながら放射線の影響などを学ぶ物語です。65カ国以上で上映されました。「アンゼラスの鐘」は被爆した長崎の医師がモデルで、10月には国連でも披露されます。

有原さんは「アニメでは登場人物を身近に感じてもらうことが大切」と言います。自分のこととして考えてもらうためです。「つるにのって」の原案者、美帆シボさんは「見終わったときに前向きに、自分も何かしたいと思える」と魅力を話します。

映画を見たカナダの小学生が首相に核兵器廃絶に取り組むように手紙を書いたこともあったそうです。有原さんは、作品の思いは国境を超えて「人を動かす力を持つ」と、考えています。(中2・岩田皆子)

 
 原作者 私費で制作 −「しんちゃんのさんりんしゃ」
 
「しんちゃんのさんりんしゃ」
ダイジェスト版

アニメ映画「まっ黒なおべんとう」「しんちゃんのさんりんしゃ」「よっちゃんのビー玉」は広島での原爆投下の悲劇をテーマにしています。この3作品の原作者、児玉辰春さん(79)=広島市佐伯区=に、アニメの良さを聞きました。

児玉さんは当時の状況や主人公の気持ちを、子どもに分かってもらいやすい、と教えてくれました。

中学校の先生を退職した後も平和について学んだり、童話を書いたりしていた児玉さんは、被爆者の家族を取材してこの3つの物語を書きました。「まっ黒なおべんとう」と「よっちゃんのビー玉」にアニメ化の話があり、1990年、94年にそれぞれ映画になりました。

しかし、三輪車が大好きで原爆で亡くなった男の子の思い出をお父さんが語る本には、アニメ化の話が来ず、自分で2000万円を出して制作をお願いしました。

3作品とも、児玉さんが把握しきれないほど、全国の学校で上映されているそうで、アニメの力の大きさを実感したそうです。(中1・高木萌子)

 
 
 

小中生ワークショップ 4日間の制作体験


アニメーション作りのワークショップでペン入れに取り組む参加者(撮影・中3土田昴太郎)

小中学生がアニメーション作りに挑戦するワークショップが8月21日から4日間、アステールプラザ(広島市中区)でありました。その最終日を取材しました。

作業場は終了時間が迫っていたので、ピリピリしていました。参加した14人は一生懸命机に向かい、色鉛筆を塗る音だけが響いて、漫画家のアトリエのようでした。

制作はまず、童話「うさぎとかめ」を基に、ウサギが改心するまでのストーリーを考えることから始めました。ディレクターの指導のもと、絵コンテや下書きの作業を経て、約700枚をペン入れ、色塗り、撮影しました。下書きを含めるとその倍を描いたことになります。

このワークショップは、広島国際アニメーションフェスティバル実行委が、小さいころからアニメに親しんでもらおうと、フェスティバルが始まった1985年から毎年開いています。

最後に出来上がった作品を上映しました。700枚はたった約2分間で終わりましたが、子どもたちからは歓声が上がりました。(中3・小林大志)

 
 分かりやすさ満点 もっとPRを
 

アニメーションについて取材した感想を出し合いました。「重いテーマでも、子どもに分かりやすく伝えることができる」など、全員がその力に驚いていました。

また自分で作品を作ることは「戦争、平和について、積極的に知ろうという良い機会になる」と考えた人もいました。

日本のアニメを紹介する大規模な博覧会が、米国で毎年夏に開かれるなど、世界で注目されています。平和を訴える手段としてアニメを活用するチャンスだと言えます。

しかし、平和とアニメを結びつけた活動が「地元であまり知られていないことが気がかり」という意見が多かったです。

学校でアニメを学ぶ機会をつくるなど、身近に感じる工夫があるといいと思います。大人から子どもまで、もっと見たくなるよう、PRに力を入れてはどうでしょうか。(高3・本川裕太郎)