医学面での交流は今回、初めて実現した。大統領選さなかのテヘラン市内で、毒ガス被害者を主に診ている病院三カ所を訪れ、両国の医師が討議。病理学・疫学の研究や疾病予防対策で連携の糸口をつかめた。
ただ両国の被害者には、被毒状況の違いがある。日本は「毒ガス工場での微量の長期暴露」で、イランは「戦場での一度の大量暴露」。経過年数も異なり、同じ扱いは難しい。
眼科治療で有名なラバフィネジャド病院では、ハミッド・ソフラプル院長(59)ら六人と意見を交わした。
広島大大学院の武島幸男助教授(42)=広島市南区=が、同大医学部などが一九五二年以来、大久野島(竹原市)の元工員らの検診や基礎研究を続けてきた概要を説明。慢性気管支炎など疾病の統計、高い肺がん発生率と原因究明、マスタードガスによる遺伝子の突然変異といった半世紀の蓄積を話した。
ソフラプルさんは「後遺症がいつまで続き、人体の本質にどのような影響があるのかが最大の関心事だ」と語った。
イマームホメイニ病院では、化学兵器禁止機関(0PCW)の科学諮問委員でマシュハド大のメヒディ・バラリムッド教授(63)と面会。イラン側から、共同研究や学生交流の提案があった。
「ジャンバザン」と称される戦争負傷者を支援する財団運営のササン病院。ハミッド・バフマン院長(69)らは、呼吸器系の後遺症の進行と喫煙との関連や、肺の細気管支での発病メカニズムと治療方法について日本側の情報提供を求めた。
内科医院を開業している津谷隆史医師(50)=同市東区=は「今後心配されるがんのフォローが必要。連絡を取り合い、協力していきたい」と話していた。
【写真説明】ササン病院の院長室で、バフマン院長(左端)と毒ガス患者の診療や研究成果について意見交換する津谷医師(左奥3人目)ら広島の使節団一行
   
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