広島市民球場(広島市中区)の跡地利用をめぐり、市はライトスタンドの一部を解体せずに保存し、被爆地の復興のシンボルとして球場が果たした役割を後世に伝えていく方針を15日、固めた。近く公表する跡地利用計画案に盛り込む。跡地の中心部は市民広場とし、折り鶴の展示施設なども配置する方向で計画案の最終調整を進めている。
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跡地利用計画案がまとまった広島市民球場。市はライトスタンドの一部保存の方針を固めた
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市は球場全体を解体する方向だったが、市民団体などからの保存要望を受けて方針を転換した。計画案で保存方針を打ち出すスタンドは外野ライト側の一部の約3000席。将来的に劇場や文化発信の施設の整備スペースと位置付けている内野一塁側約3000席も、当面は残すとしている。
スタンドは広場で開かれるイベントの観客席などとして有効活用を図る。広島東洋カープの優勝記念碑などが設置されている球場南側の「勝鯉(しょうり)の森」も残す。
計画案の柱としては、跡地北側に国内外から寄せられる折り鶴を展示する施設も設ける方向だ。平和記念公園の原爆慰霊碑から原爆ドームをつなぐ軸線を意識して立地するとみられる。
現球場の西側に隣接し、移転構想が持ち上がっている広島商工会議所ビルは跡地の東側に移り、同ビル跡地は本川の護岸とともに「水の都ひろしま」のシンボルとして整備する方針を示す。
市は将来的に実現を目指す劇場などを除き、当面の跡地利用の事業費を33億6000万円と算定。球場解体は早ければ今年秋から、広場などの整備は2011年度に着手し、12年度の利用開始を目指す。
市は利用計画を週明けに市議会に提示したうえ今月中に正式決定し、2月の市議会に提案する新年度予算案に必要な経費を盛り込みたい考えだ。(東海右佐衛門直柄)
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