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「球場跡」なお難題
利用計画、議論の焦点を検証

2009.1.31

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観客席が埋め尽くされたプロ野球最終公式戦の広島市民球場。跡地利用計画をめぐり、集客効果も議論になっている(昨年9月28日)

 広島市が30日、市民球場(中区)の跡地利用計画を正式決定した。市議会には依然、主要施設の一つである折り鶴の展示施設の必要性や、集客効果などを疑問視する声が根強い。2月16日からの市議会定例会を前に、議論の焦点を検証する。(東海右佐衛門直柄、水川恭輔)

▽折り鶴ホール …議会「展示施設は既存」

 「客観的な立場の選考委員会が芸術性が高く、ヒロシマの発信という点からも価値があると認めてくれた」。秋葉忠利市長は27日の記者会見で、全国から寄せられる折り鶴を展示するホールをつくる意義を強調した。

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 ホール案は2007年の計画の公募で選んだ優秀2案のうち、建築家で早稲田大名誉教授の池原義郎氏のグループが提案した「平和祈念堂」が土台だ。池原氏らがつくる特定非営利活動法人(NPO法人)が1億6000万円の寄付を募り、整備・運営する計画だ。

 市は寄せられた折り鶴は02年度から処分せず、市施設3カ所で約70トンを保管中。ホールでは過去1年分(約10トン)を展示し、平和を希求する大切さをアピールする。

 これに対して市議会の反応はおもわしくない。「原爆の子の像に展示施設はある。2つつくる意味があるのか」「折り鶴の保管が必要か。議会の意見と隔たりがある」などの声が上がっている。

▽都心の集客力 …大型の催し誘致も

 市は計画づくりで「年間150万人」の集客目標を掲げた。それだけに跡地の大部分を「市民広場」や「市民の森」で占める計画は、集客力がないとする意見がある。

 秋葉市長は主張する。「そう言った議論はニューヨークにセントラルパークを造るときにもあったが、いまや街の中心的な存在となった」。例えば、市民広場の集客手段の方法としてひろしまフードフェスティバル(集客80万人)や島根ふるさとフェア(同18万人)など大型イベントの会場としての活用を挙げている。

 市議会には「箱物をつくるより、ソフトで集客を図る考えには賛成」との声もある。ただ、秋葉市長が例示したイベントは従来から広島城や県立総合体育館など他の場所で人気を集めていた。このため「既存のイベントを寄せ集めることは集客効果といわない」と指摘する意見もある。

 広島本通商店街振興組合の下村純一理事長も「集客の場としては難しそう。夜に出歩くのが怖い場所にならないか」と心配する。

 計画にはにぎわい施設としては劇場と文化発信施設も盛り込まれたが、「導入可能なものから順次整備」とされ、時期は明記されていない。厳しい不況と財政難の中、事業化が遅れれば、活性化を求める関係者の不安は募ることになる。

▽解体時期 …秋の利用 要望強く

 第一歩となる球場解体工事の時期も論議になりそうだ。市都市活性化局は「着手の遅れで空白期間をつくるのは望ましくない」と今秋着手を念頭に置く。

 ただ、新広島市民球場(南区)は天然芝の保護でオープン1年間はアマチュア団体などの利用が制限される予定だ。市は代替措置として現球場を引き続き一般開放すると表明しているが、それも十月末までだ。

 県高校野球連盟の山下誠理事長は「秋以降、各団体は場所探しに頭を悩ませるだろう。もっと長く使わせてほしい」。解体の時期が、あらためて議論になるのは必至だ。

 市は2月定例会に提案する新年度当初予算案には、球場解体費(約5億4000万円)の一部を盛り込む方針だった。議会の理解を得るには時間が必要と判断。緑地整備などの調査費を中心に計上する方針に切り替えた。

 今後、議論の末に解体時期がずれ込めば、12年度を目標とする利用開始時期にも影響が出てくる可能性がある。跡地に隣接するビルの移転で、市への協力姿勢を示している広島商工会議所の大田哲哉会頭は29日の記者会見で「官民協力の都市の再開発が頓挫しないよう希望する」と計画を批判する動きにくぎを刺した。

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