広島市民球場(広島市中区)の跡地利用計画案が19日、市議会都市・経済活性化対策特別委員会で正式に報告された。スタンドの部分保存を新たに打ち出した案をめぐって議論したが、柱の一つである折り鶴の施設への異論が噴出した。関連事業費を計上する新年度予算案で審議の焦点となりそうだ。
計画案によると、国内外から寄せられた折り鶴を展示・保存する「折り鶴ホール」は跡地中央の「市民広場」の北側。賛同する市民らが設立予定の特定非営利活動法人(NPO法人)が整備・運営し、約1億6000万円と見込む整備費の募金を充てる予定。周囲に「緑の回廊」を設け、平和に貢献した人々を紹介するという。
しかし、この日は「必要なのか」「中心市街地の活性化につながらない」などと疑問視する声が相次いだ。市はこれまで跡地に「年間150万人の集客」を掲げてきた。
これに対し、竹内重喜広島大本部・現球場跡地担当課長らは、折り鶴施設が市が公募した跡地利用の優秀案の基本コンセプトであることを説明。「市民広場で多くのイベントを開催し、人が憩う空間にしていきたい」として理解を求めた。
スタンド保存への疑問の声もあった。ライトスタンドの約3000席を永久保存するほか、将来的に劇場・文化発信施設を建設するまでは内野一塁側の約3000席分を残す構想。ただ、保存のための耐震補強工事費の約半分がいずれ壊す一塁側だ。この点を「もったいない」とする指摘も出て、市の案に賛意を示した委員は一人だった。
市は今月中に計画を正式に決定し、新年度予算案に球場解体費などを盛り込む。しかし、計画案への評価が得られなかったことで不安要素を抱えることになった。
▽市民球場跡地「広場」命名権を売却
広島市は19日、スタンドの一部保存を盛り込んだ市民球場(中区)の跡地利用計画案を市議会に提示した。最も広い面積を占める「市民広場」は企業へ命名権を売却して事業費の一部とするなど、財源の確保に向けた方針も明らかにした。
市民広場は周辺の「市民の森」を含めると約4・5ヘクタール。約1万人の利用を可能とし、2012年度の利用開始を目指す。復興の象徴として保存するライトスタンドの一部を観客席として活用し、野外イベントなどを誘致する。広場の一角には国内外から寄せられた折り鶴を展示・保存するホールを設ける。
当面の整備費は33億6000万円。市は球場改修などの目的で積み立ててきた「市民球場基金」から11億4000万円を拠出する。さらに市民広場の命名権収益を約8億円かかる広場と森の整備費の一部に見込むほか、スタンドのいすなどをオークションで売却する案も浮上している。(東海右佐衛門直柄)
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