2005.4.7
3. 追っかけ姉妹 情熱ノート

写真満載 感動つづる

 「見た目だけならジャニーズの方が格好いい。普段は茶髪にピアスをしているような人が、鋭い目つきで伝統芸能に取り組む姿勢にひかれる」。広島市安佐南区の福祉専門学校一年安井美穂さん(18)は、「神楽ノート」に張った写真をいとおしそうに見詰めた。

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「役になりきって頑張る姿は、何度見ても格好いい」と、神楽の魅力を語る安井絵美さん(左)と美穂さん

 舞台で勇壮に舞っている場面や、あこがれの団員たちと一緒に撮った写真などを満載。神楽を見た感想だけでなく、目当ての団員と初めて言葉を交わした感動なども細かく記されている。「これ一冊あれば、舞台を見た興奮も思い出せる」。姉の会社員絵美さん(25)も笑顔で言葉を継いだ。

 「こけし」「10トントラック」。インターネット上でこう呼ばれる姉妹は自称「追っかけ」だ。携帯電話を使い、神楽団のホームページに舞の感想などを書き込むと、団員たちから直接、返事がくる。「仲が良くなれば、新年会に呼んでもらえることもある」。人気の「ヨン様」とは違い、手が届く「アイドル」でもある。

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 そんな美穂さんは、実は二〇〇四年四月から半年間、同市安佐北区の神楽団に所属した経験がある。団員に「神楽に興味あるなら、練習を見に来ないか」と誘われ、何度か通ううちに入団。決まったメロディーがなく、アドリブのセンスなどが問われる笛に挑戦した。

 「自分の笛で舞ってもらえ、みんなの呼吸が合うと心地いい」。太鼓や舞との一体感、観客から受ける拍手の快感も味わった。ただ、神楽に力を入れれば入れるほど違和感が募った。上演があれば、日程が重なる別の神楽団の舞台は見られないからだ。「一つの神楽を続けるのでなく、いろんな神楽に触れたい」

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 退団を決め、見る神楽に徹する道を選んだ。毎週末、姉妹で神楽を見に出掛ける。秋には一日三、四カ所はしごする。想像を超える出来の神楽を見れば掛け声や拍手を送り、手を抜いていると感じれば容赦なくやじる。絵美さんは「迫力がある表情や所作は、どんなおじさんでもすてきに見える。むしろ、三十歳を過ぎると元気さだけでない味わいが出てくる」と話す。

 友人や同僚などには敬遠されがちだが、「三度の飯より好き」な神楽。「同世代の若者が頑張っている姿を見ると、応援してあげたくなる」。純粋に、神楽を見る喜びをかみしめている。


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