2005.4.8
4. 臨場感伝える動画・写真

「魅力 HPで共有を」

 ホームページ(HP)「よってけの部屋へよってけ」の神楽の画像をクリックすると、軽快な神楽ばやしが鳴り響いた。笛が奏でるメロディーを重低音の大太鼓が導き、小太鼓や手打ちがねが細かくリズムを刻む。画像は小さく不鮮明だが、会場の臨場感は十分伝わってきた。

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愛用するカメラを手に「自分が感じる神楽の魅力を、どんどん発信したい」と語る山本さん

 発信するのは広島市南区青崎の会社員山本良基さん(48)。HPの名前は子どもの時のあだ名「よってけ」から付けた。昨年十一月から順次、安芸高田市や北広島町、島根県などで活動する十七神楽団の計十八回の舞台を動画で載せている。これとは別に、写真の掲載は約二千三百枚に上る。

 楽譜はなく、同じ四つの楽器を使っても、団によってテンポや間合い、強弱などに微妙な違いがある。山本さんは「神楽は舞を引き立たせるはやしも大事。それぞれで受け継がれてきた節回しを、聴き比べてほしい」と力を込める。

 広島市安佐北区白木町で生まれ育った。風物詩としてひと秋に数回、見物に出掛けていたが「神楽といえば大蛇。鬼が出てきて、やっつけて終わり。どこもみな同じ」。正直な感想だった。

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 意識が変わったのは二〇〇二年十一月。鬼が手を耳の近くに構えるしぐさなど、所作に込められた意味や演目の時代背景などを解説した同区の宮乃木神楽団のHPに出会った。「そこまで言うなら見てみよう」。うんちくを頭に入れ、あらためて神楽を見直すと、神楽団によって異なるこだわりが分かってきた。

 「自分が見た素晴らしさを記憶だけにとどめず、多くの人と分かち合いたい」。まず、神楽舞台を写真で撮り、同年からHPで発信し始めた。使うのはコンパクトサイズのデジタルカメラ二台。会場では、一眼レフカメラを携えたファンが目立つ。30センチ近い望遠レンズも。「うらやましいと感じることもあるが、自己満足できる素人ならではの写真を撮ろう」とこだわった。

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 見る角度が異なれば、同じ神楽面も違った表情を見せる。鬼が登場する迫力ある場面から、幣のきれいな動きまで常にシャッターチャンスを狙う。一演目で約百枚、一日六百枚前後は撮るが、まだ物足りない。「耳にしたら、みな胸が高まるはやしまで、会場全体の雰囲気を伝えたい」。そんな思いで、動く神楽をHPに取り入れた。

 「神楽は、世代を超えて支持されてきたからこそ、今も廃れず受け継がれてきた。生で見てもらうきっかけになれば」と、HPの効果に期待を込める。仕事の忙しさが増してきた四十歳代後半。「家でテレビを見ながら寝てるより、神楽を見に出掛けた方が疲れが取れる」と笑う。


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