2005.10.19
5. 大祭奉納へ輝き再び

半世紀ぶり熱意集結

 北広島町新庄の浜田道大朝インターチェンジを降り、県道を車で走ると稲刈りを終えた田の向こうに、こんもりとした森が現れる。鎮座七百年を迎え、五十年に一度の大祭を十一月十二、十三日に開く同町大朝の枝宮八幡神社だ。

Photo
50年に一度の大祭に向けて、意見を交わす住民たち

 四十戸百九人が住む枝ノ宮集落。七百年祭は集落の人口を超える百五十人近い人たちが支える。みこしをかつぐ男性、もちまきのもちを作る女性、神事や作法を取り仕切るお年寄りから、稚児行列に参加する子どもたちまで地域総出で作り上げる。祭りの最後は、枝ノ宮など地元五神楽団の神楽奉納で締めくくる。

 「大祭があるのに神楽団がしっかり舞えなければ恥ずかしい。三十歳を前に、ようやく祭りの意義や神楽団の大切さに気付いた」。神社近くに住む枝ノ宮神楽団の佐々岡猛副団長(29)は転機となった二年前を振り返る。

  □   □

 同団は、約百五十年の歴史を持つが、高齢化や後継者不足に悩んでいた。一九八八年ごろから四年に一回の奉納神楽の時だけ三カ月程度の練習をして役目を果たす、という状況にあった。「残念だが仕方ない」。百年以上前の台本を持ち、各地の競演大会で審査員を務める森脇健児宮司(58)も寂しい思いをしていた。

 二〇〇三年、七百年祭を見据え、危機感を抱いていた佐々岡副団長が「競演大会に出て皆を驚かせよう」と呼び掛けた。「神楽なんて」と言っていた向井康敏さん(23)も熱意に押されて加わった。「団結し、頑張っている姿を見せればお年寄りも元気になる」

 昨年十月の大朝町神楽競演大会。ほぼ二十年ぶりに出場し、準優勝に輝いた。「勢いを途絶えさせず、後世に何か形で残したい」と久保弘司団長(49)。草刈りや整地など地域の仕事を神楽団で請け負い、五百万円近い資金をため、他団体から借りていた神楽衣装も新調した。七百年祭で初披露するという。

 輝きを取り戻した神楽団。同じ枝宮八幡神社に奉納する小枝神楽団の田村和幸団長(42)は「励みになる。一生に一度経験できるかどうかのチャンスに皆で協力したい」。当日は、大塚、朝間、筏津を加えた五神楽団が合同で初めて、「八岐大蛇(やまたのおろち)」を上演する。

  □   □

 「盛大な大祭が夢だった。住民も神楽団も全力で支えてくれ、ありがたい」と、森脇宮司は、喜びをかみしめる。先代の父厳男さん(故人)が催した六百五十年祭は、小学二年の時だった。参道から境内に続く神楽面などの屋台、あふれんばかりの住民が集まった。

 五十年たち、神楽の形態や衣装は変わったが「地域の願いや思いが結集する宮神楽の基本は揺るがず、変わらない」と森脇宮司は言い切る。先代の教えである「歴史を伝え、郷里を語る鎮守の森」。神楽を絆(きずな)に、その実現を目指す。

第5部おわり


TOPBACK