広島の夜 盛り上げ役に
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「神楽は、全国に打って出られる広島の伝統芸能。多くの観光客に喜んでほしい」と語る宮本室長
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―なぜ今、観光キャンペーンの中心に神楽を据えたのですか。
全国の伝統芸能が共演する「日本のまつり2003ひろしま」が二〇〇三年十月にあり、北広島町の旧千代田町総合体育館で神楽上演があった。約三千人の観客が集まる盛況ぶりで、滞在中だった高円宮妃久子さまからも大きな拍手を頂いた。全国で喜んでもらえる素材だと判断した。
―観光振興のうえで神楽の魅力は何ですか。
伝統芸能のジャンルでは県内トップの観光資源であり、西日本を探してもなかなか見当たらない。面や衣装がビジュアル的で、勧善懲悪のストーリーは安心して見ることができる。内容を深く掘り下げるというより、時代に合ったアップテンポなパフォーマンスが、観光客に魅力的に映るのだろう。
県は常に、広島らしい夜の観光資源が少ない課題があった。宿泊を伴う滞在型の観光が増えれば、飲食業やお土産など商工業への波及効果が期待できる。神楽は夜にふさわしい芸能で、かがり火に照らされた幻想的な雰囲気も良く、キャンペーンに取り上げた。
■ファン着実に増加
―手応えはどうですか。
昨年、広島市中区の広島城で神楽の無料公演を四回開き、県内外の計一万二千人に楽しんでもらえた。神楽ファンは着実に増えていると感じた。今年も二十九日から十一月末にかけて「THEひろしま神楽in広島城」と題して展開する。回数も六回に増やす。
―芸北地方の伝統芸能を、なぜ都市部で見せるのですか。
首都圏や関西、九州の人たちに、神楽を知ってもらいたい。神楽の魅力を知らない観光客が、最初から芸北地方を訪れる可能性はまだ低い。市内中心部でまず見てもらい、芸北地方に足を延ばすきっかけにしたい。パンフレットには、芸北地方である神楽大会のスケジュールを載せ、現地を回るスタンプラリーも盛り込んでいる。
■「体験型」へ知恵を
―原爆ドームや厳島神社がある瀬戸内海沿岸部に対し、山間部の観光振興が手薄だったのでは。
遠方からの交通手段を考えると、どうしても新幹線の駅周辺の観光になってしまう。山間部には規模が大きいホテルや旅館も少なく、瀬戸内海沿岸部を中心にせざるを得なかった。ただ、マイカーを使った観光客は増えており、高速道路を活用した観光振興策が、今後の課題といえる。
行政としての情報発信も、従来は個別の神楽大会を紹介するなど「点」にとどまっていた。今後は島根県とも協力し、地域を網羅した「線」や「面」の情報をホームページなどで発信する。受け入れ側も神楽衣装を試着して記念撮影できるとか神楽面を作れるなど、体験型観光の知恵を絞ってほしい。
広島市東区在住。県民文化室長、地域産業振興室長を経て、2005年4月から現職。04年に続き、神楽を軸にした県大型観光キャンペーン「ええじゃん広島県」を展開している。
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