アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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放射性廃棄物 重い課題
 
 処分場建設に反対強まる

 韓国が世界でも有数の積極的な原発建設計画を進めている背景には、急速に伸び続ける電力需要がある。だが、原発の運転で生じる放射性廃棄物処分場の建設計画が進まず、原発の建設スケジュールにも影響を与えかねない状況になっている。
 韓国は一九九七年のアジア通貨危機で一時は経済成長率がマイナスに陥ったが、九九年以降はIT産業を先導役にして急速に回復。それに伴って電力需要も大幅に伸び、二〇〇二年の発電電力量は三千二十億キロワット時と、十年前の九二年の千二百九十五億キロワット時と比べて二・三倍に上っている。
 電力供給を支える主役が原子力である。二〇〇二年の原子力比率は38・9%。日本の34・6%を上回り、アジア一高い水準になっている。
 一九八〇年代までに運転開始した原発は九基だったが、九〇年代以降も同じペースを維持して九基を稼働させ、今では計十八基を持つ。二〇一五年までにさらに十基を新設する計画を打ち出しているのも、今後も経済が発展しておう盛な電力需要が生じるとの予測に沿ったものだ。
 だが、ここにきて難題に直面している。それは放射性廃棄物の処分場建設問題である。

 政府は昨年七月、全羅北道扶安郡が誘致表明したのを受けて、西海岸沖合の蝟島(ウィド)に処分場を建設することを決定した。既に二〇〇二年末現在で四カ所の原発の貯蔵施設には低レベル放射性廃棄物がドラム缶で六万本たまり、二〇〇八年には満杯になる。同じく各原発で保管中の高レベルの使用済み燃料も六千トンあり、二〇一六年でいっぱいになるためだ。
 ところが、扶安郡では処分場建設に反対する住民が激しい抗議行動を展開。十一月には郡庁舎前で約五千人のデモを繰り広げて火炎瓶まで飛び交う騒ぎとなったため、政府は十二月に計画を見直し、今年二月に賛否を問う住民投票を実施すると表明した。否決されれば、計画は白紙に戻る。
 処分場をめぐっては、政府は二〇〇〇年に一度、候補地の公募を試みたが、応募する自治体はなかった。今回、地元が誘致した蝟島以外で建設できる見通しは低い。原発が増えるにつれて放射性廃棄物も一段と増える中で、処分場が建設できなければ、今後の原発建設や運転に支障が起きる可能性があるという。

蝟島の放射性廃棄物処分場建設計画
韓国の西海岸にある扶安郡格浦港から14キロの離島(面積約1300ヘクタール)で、1500人が暮らす。政府は2008年までに、低レベル放射性廃棄物10万本を埋設する処分場(将来は80万本に拡大)と、2016年までに高レベル放射性廃棄物2000トンを保管可能な中間貯蔵施設(同2万トン)を建設。扶安郡が処分場を受け入れる見返りに約300億円の補助金を出す計画にしていた。



■韓国の原発の放射性廃棄物貯蔵量
(2002年6月現在、韓国水力原子力会社)
発電所
高レベル放射性廃棄物
(単位:トン)
低レベル放射性廃棄物
(単位:本)
古 里
霊 光
蔚 珍
月 城
貯蔵能力
1,737
1,696
1,563
4,807
9,803
貯蔵量
1,243
866
656
2,876
5,641
貯蔵能力
50,200
23,300
17,400
9,000
99,900
貯蔵量
32,126
10,358
11,701
5,332
59,517

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