北朝鮮の電力事情 悪化
北朝鮮の電力事情が悪化した背景には、エネルギー資源の供給元だった旧ソ連の崩壊や火力発電の燃料となる石炭生産の減少、水力発電を支えるダムの水位の低下などがある。資金難から新たな発電所の建設もストップ状態で、KEDOの軽水炉二基の建設が中断された影響は大きい。
経済協力開発機構/国際エネルギー機関(OECD/IEA)などの調べでは、北朝鮮の電力設備容量は二〇〇一年で水力発電が五百万キロワット、火力発電が四百五十万キロワットの計九百五十万キロワット。韓国(五千八十六万キロワット)と比べて五分の一以下である。
問題なのは、発電所が稼働して家庭や工場などに電気を送る発電電力量の少なさだ。二〇〇一年は三百億キロワット時と、韓国(二千九百億キロワット時)のほぼ十分の一の水準。発電所の稼働率が低下していることを示している。
北朝鮮の発電電力量は、一九八〇年ごろまでは韓国と肩を並べる水準だった。韓国が八八年のソウル五輪大会に向けて急速に経済発展する中で差が開いたが、北朝鮮も発電所を増やし、八八〜九一年は五百億キロワット時を超えていた。だが、九二年以降は三百億キロワット時台へと大きく落ち込んでいる。
その理由として、海外電力調査会は、@石油輸入量の減少A石炭産出量の低下Bダム水位の低下―などを挙げる。
石油の輸入は主に旧ソ連に頼っていたが、一九八九年に「ベルリンの壁」が崩れ、旧ソ連の共産主義体制の崩壊などでバーター取引ができなくなった。九〇年に六十万トンあった輸入量は翌年には十分の一以下に減少。石炭産出量も年間六百万トン以上から四百万トン台に減った。
石油は中国からの友好価格による輸入で一部カバーしているが、火力発電所の稼働率が50%未満に低下。それを補うため水力発電所をダムの貯水量と関係なく稼働させたため、水位が低くなって水力発電量も減ってきたという。
水力発電所の多くは日本の植民地統治下時代に造られたもので、老朽化している。火力発電所は八九年以降、経済悪化で開発資金の手当てや資材調達が難しくなり、建設計画が中断されている。
この状況下でKEDOの軽水炉二基、出力計二百万キロワットが完成した場合、発電電力量は九〇年前後のピーク時に近い水準にまで回復。経済状況の改善にもつながるとみられていた。
ただ、原発が完成しただけでは、電力事情の改善にはほど遠いと指摘する専門家も多い。原発はKEDOが提供するが、送電網の整備は北朝鮮が負担しなければならないからだ。既存の送電網が老朽化して送電ロスが一割近くに達するとみられる中、電力事情の悪化がさらに経済の足を引っ張る悪循環から抜け出すには時間がかかりそうだ。
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