アジア・アフリカからの報告 原子力を問う
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東南アジア 原発ゼロ

「1号機」も資金面に課題
 原発が相次いで建設されているアジアの中で、いまだ原発ゼロなのが東南アジアだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟十カ国のうち、タイとフィリピン、インドネシアはいち早く計画したものの、政権交代や住民の反対運動などで中止。後発のベトナムが第一号機の稼働に向けて動いているが、資金調達などの課題が残っている。
 東南アジアで最も早く原発建設に向けて動いたのがタイである。一九六一年に原子力庁を設け、六七年にはタイ電力公社が出力六十万キロワット級の原発建設を計画。政府の許可も得て八二年ごろには稼働する予定だった。
 ところが、海底ガス油田が見つかって当面のエネルギー調達にめどがついたうえ、七九年に米スリーマイルランド事故が発生。建設コストの上昇も重なって計画は中止された。その後、再び計画が持ち上がったが、九四年に世論の反対で見送られたという。
 インドネシアでは二度も計画が流れた。七〇年代に出された最初の計画は、その後に起きたチェルノブイリ原発事故の影響で中止。九〇年代にはスハルト政権下で出力十八万キロワットの第一号機を着工する手前まで計画が進んだが、賛否を問う国民投票の実施を求めた反対運動が起き、政府は再び計画を撤回した。
 最近は新たな計画が持ち上がっている。二〇〇〇年に韓国と合意したプロジェクトで、ジャワ島北東部のマドゥラ島に海水淡水化のために新型の一体型原子炉(SMART)を建設し、約十万キロワットの発電と同時に一日四万トンの水を供給する計画である。韓国での新型炉開発の成否が実現のかぎを握っている。 フィリピンは原発がほぼ完成しながら計画を放棄した。七六年からバターン原発を建設。八六年には総工費二十一億ドルをかけて98%まで完成していたものの、マルコス政権からアキノ政権へと交代した際に中止された。チェルノブイリ原発事故が起きて反原発運動が高まったうえ、バターン原発の経済性や安全性などにも問題が指摘されたためである。
 一方、ベトナムはフィリピンなどのように政権交代に伴う政策変更の恐れが少なく、ドイモイ政策の下で経済が急速に伸びていることから、計画は予定通り進みそうだ。
 ただ、ネックは資金調達だ。伸び続ける電力需要に対応して発電所や送電網の整備を急がねばならず、二〇一〇年までに約二百億ドルの設備投資が必要と試算されている。
 だが、政府だけでその資金は賄え切れず、海外や民間からの投資に頼らざるを得ない。二基の原子炉建設となると、さらに三十億ドル程度は必要になるため、着工するには日本をはじめ、海外諸国の資金協力が不可欠とみられている。





2017年をめどに原発の建設を目指すベトナム原子力委員会。稼働すれば東南アジア初になる(ハノイ市)
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