発展へ電化率アップ急務
バターン原発を使わなかったフィリピンは、向こう十年間の中期エネルギー計画にも原発建設は予定せず、地熱や天然ガスなど自主エネルギーを活用した電力供給に努めている。特に地熱は米国に次ぐ世界二位の規模で、エネルギー自給率は50%を超える。だが、国を構成する約七千もの島々がネックとなって電化率は低く、経済発展や生活水準の向上を図るには電化率のアップが急務だ。
エネルギー省によると、二〇〇二年の発電電力量は四百八十五億キロワット時。電源別では石炭が33%、地熱が21%、天然ガスが18%、水力が15%、石油が13%で、地熱の割合が高いのと天然ガスの急増が目立つ。
全体の発電設備容量は千五百十三万キロワット。トップの石炭は国内炭の質がよくないため75%はインドネシアや中国からの輸入に頼っている。火山地帯の地形を生かして蒸気を作る地熱は七カ所に発電所を設け、設備容量は百九十三万キロワット。発電コストは水力に次いで低い水準という。
天然ガスは、一九八九年から南部のパラワン島沖でガス田が開発された。二〇〇〇年には五百キロ離れたバタンガス(マニラ市の南百キロ)まで海底パイプラインが開通。四カ所、出力計三百万キロワットの火力発電所が相次いで稼働し始めており、発電電力量が急速に伸びている。将来はバタンガスからマニラ、バターン半島までパイプラインを延ばす計画で、近い将来、天然ガスがエネルギーの主役に躍り出そうだ。
一方、原子力は二〇一三年までの中期エネルギー計画には盛り込まれておらず、当面、新たな原発を建設する可能性はない。ただ、ラモス大統領時代の一九九五年に策定された長期エネルギー計画では二〇二二―二五年に出力計二百四十万キロワットの原発建設の可能性を示唆しており、将来、経済発展などによって著しい電力不足に陥った場合は再び原子力を選択する余地を残している。
エネルギー資源の開発は進んでいるものの、末端の家庭まで電気を送り届ける「電化」は今のフィリピン社会の課題となっている。二〇〇三年六月現在、四万千九百九十九カ所ある村落のうち、電気が供給されているのは88・7%にすぎない。
政府は二〇〇六年までに100%にする計画だが、問題なのは村落は十戸以上電気を供給すれば電化されたとみなされることだ。村落は平均二百五十戸あり、そのうち実際に電気が通っているのは三十―四十戸程度。つまり、村落単位ではなく戸別でみた場合の電化率は半分にも達していないわけだ。離島では発電、送電コストがかさみ、電気料金が非常に高いのが普及の妨げになっているという。
地域別でも、北部のルソン地域の電化率は高いが、南部のミンダナオ地域が低い「南北問題」も抱えている。フィリピンの電力事情の改善にはまだ相当な時間がかかり、日本をはじめ海外の支援も欠かせないようだ。
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