負担の合意形成が課題
核燃料サイクル政策の見直し論で焦点となっているのがバックエンド費用の取り扱いだ。電気事業連合会の試算では十八兆八千億円。このうち約十兆円は既に電気料金で回収する仕組みができているが、残る約九兆円の回収の仕組みづくりはこれからである。いずれにせよ、その大半は国民の負担が避けられず、徹底した論議が求められる。
試算は、再処理工場が二〇〇六年から四十年間運転することを前提に、その後に解体・処分に必要な七八年ごろまでの期間が対象。内訳は、再処理工場の操業や廃止などが十一兆円と最も多く、次いで再処理した際に出てくる高レベル放射性廃棄物の輸送・処分が二兆七千四百億円。プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料の加工工場の操業や廃止で一兆千九百億円、使用済み燃料の中間貯蔵も一兆百億円かかると算定された。
再処理関連だけで十一兆円もかかることから、次期長計の策定に当たっては、米国などのようにウラン燃料を一回しか使わずに処分するワンススルー方式も検討すべきだという「柔軟路線」への変更を求める声が出ている。
ただし、ワンススルー方式にも多くの欠点がある。再処理では廃液をガラス固化した高レベル放射性廃棄物を地中深く埋めるが、使用済み燃料をそのまま処分するとなると容量が大きいため、処分コストが高くつき、処分場の選択も難しくなる。放射能レベルもガラス固化体より強い。
さらに、一回の使い捨てだとウラン資源が約六十年しかもたないため、最低でも千年単位で動かせる高速増殖炉を中心とした核燃料サイクルと比べてエネルギーの安定供給に不安を抱える。
一方、バックエンド費用で鍵を握るのが費用負担の問題である。十八兆八千億円のうち、既に十兆千億円については電力会社が引当金制度を設け、電力料金から回収する仕組みがあるが、残る八兆七千億円については制度が未整備だ。
これについて、経済産業相の諮問機関である総合エネルギー調査会が現在、費用負担の枠組みづくりを検討中。年内にはまとまる見通しだ。
今月二十二日に開かれた同調査会電気事業分科会では、MOX燃料の加工費など約四兆円は燃料コストに当たるとして除外し、残る約五兆円について家庭に負担してもらう仕組みを了承した。
試算では標準世帯で月額約五十円程度の負担増となる。これまで制度化されていた分も合わせると、バックエンド費用全体の国民負担額は月額約百七十円という。
ただ、これもあくまで現時点での想定だ。
再処理工場の建設費が当初計画の三倍に膨れ上がったように、費用が今後、さらにかさんで国民負担が増す可能性があると指摘する声もある。
原子力発電の後処理(バックエンド)費用(電気事業連合会)
事業内容 |
費用(百億円) |
再処理工場の操業や廃止など |
1,100 |
海外から返還される高レベル放射性廃棄物の輸送や貯蔵など |
30 |
海外から返還される低レベル放射性廃棄物の輸送や処分など |
57 |
海外返還分以外の高レベル放射性廃棄物の輸送や処分など |
274 |
再処理・MOX燃料工場などで発生する超ウラン元素(TRU)の地層処分 |
81 |
使用済み燃料の輸送 |
92 |
使用済み燃料の中間貯蔵 |
101 |
MOX燃工場の操業や廃止など |
119 |
ウラン濃縮工場の後処理 |
24 |
合 計 |
1,880 |
【注】端数処理の関係で合計は合わない
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