使用済みMOXどう処理
日本では事実上、初めてとなるプルサーマルだが、世界では一九六〇年代からフランスやドイツ、ベルギー、スイスなどで実施され、日本も含めると十カ国、五十五基の原発で約四千体のMOX燃料が燃やされている。核兵器に転用可能なプルトニウムを平和利用できる一方、燃料の製造価格は通常のウラン燃料より高い。さらに日本では使用済みMOX燃料をどう処理するか、いまだ手付かずの状態である。
資源エネルギー庁によると二〇〇二年末現在、世界の軽水炉でのMOX燃料の使用実績は、フランスが二十一基で千八百二十二体とトップ。次いでドイツが十四基で千四百二十体、ベルギーが三基で二百八十九体、スイスが三基で二百八十体―などだ。このほか米国、イタリア、インド、オランダ、スウェーデンでも実施され、欧州での実績が目立つ。
米国では既にプルサーマルは中止し、使用済み燃料は再処理せず、そのまま地中に埋める直接処分(ワンススルー方式)に転換した。ただし、九八年のロシアとの核兵器解体の合意により、約三十四トンのプルトニウムをMOX燃料に転用。核不拡散のために六基の原発で燃やす計画を進めている。
気になるプルサーマルの安全性だが、従来のウラン燃料を燃やす場合とほとんど変わらないとされる。MOX燃料を三分一ほど装荷した時、プルトニウムによる発電が50―60%を占めるが、ウラン燃料を燃やしている原子炉でも運転中に発生するプルトニウムによって30―40%程度を発電しており、基本的な発電の仕組みに違いはない。
ただ、プルサーマルではMOX燃料の製造コストが通常のウラン燃料の一・五―二倍と高いのが悩みだ。ただし、原発の発電コストのうち燃料の占める割合は十分の一程度のため、コスト全体では1―2%程度のアップで抑えられるという。コスト上昇分については、電力会社が経営努力によって吸収し、電気料金への転嫁はしない方針だ。
一方、プルサーマルによって発生する使用済みMOX燃料については当面、保管するしかない。国内では使用済みMOX燃料を再処理する工場がなく、青森県六ケ所村に第二再処理工場が建設されるまでは、核燃料サイクルの輪はプルサーマルを一回実施しただけで終わる。
第二再処理工場を建設するとなれば、電気事業連合会が十八兆八千億円と試算した原子力発電の後処理(バックエンド)費用がさらに膨れ上がる。コスト問題から核燃料サイクル政策の見直し論も出ている中、第二再処理工場が建設される見通しは厳しい。例えプルサーマルが始まっても、核燃料サイクルの輪が完全に閉じるまでには相当な時間がかかりそうだ。
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