課題多く難航も予想
NUMOが最終処分場の建設候補地の公募を始めて一年半。応募はいまだゼロの状態だ。地中とはいえ高レベル放射性廃棄物を一万年以上も埋設する計画だけに、地元自治体だけでなく都道府県レベルの合意も必要である。国は原発同様の手厚い交付金で立地を図る構えだが、建設地決定まで至るにはかなりの曲折も予想される。
NUMOは、三段階に分けて候補地を絞り込む計画である。まず応募した自治体に対して文献などで過去の地震などを調べ、概要調査地区を選定。ボーリング調査などで活断層の有無や地層を確認し、二〇〇八―一二年ごろに精密調査地区を選ぶ。実際に地下施設を設けて地下水の状況などを調査し、二三―二七年ごろに建設地を決定する。
各段階で調査報告書の公告・縦覧や説明会などがあり、地元住民の意見を聞く機会も設けられる。最終的には、地元市町村長や都道府県知事の同意を得て、建設地を閣議決定する。
選定に当たって、@火山A活断層B隆起・浸食C鉱物資源―などの有無がポイントになる。過去二百万年に活動した火山は三百五十あり、活断層も約二千が確認されている。激しい隆起・浸食があった地域は対象外で、鉱物資源がある場所も除外される。将来、地下に処分施設があると知らずに資源採掘すれば、放射性物質が漏れ出す原因になりかねないからだ。
建設地が決まれば、地上に一平方キロの施設、地下に十平方キロの坑道施設を十年がかりで建設。三三―三七年ごろからガラス固化体の搬入が始まる。年間約千本ずつ埋設し、今世紀末までに搬入を終えて処分施設は閉鎖される。全体では、調査段階が約二十五年、建設が約十年、操業が約五十年など、ほぼ一世紀にわたる事業になる。
国は応募自治体に対し、最初の文献調査段階で年二・一億円、概要調査段階で年二十億円の交付金を出す。建設、操業段階での交付金や固定資産税などは未定だが、自治体の財源としてはトータルで一千億円を超す金額になり、過疎対策や地域づくりの効果を狙う。
一方、コストも巨額。電気事業連合会は昨年十一月、最終処分費用を二兆五千五百億円と試算した。電力会社などが原子力発電量、すなわち高レベル放射性廃棄物の発生量に応じた拠出金を毎年NUMOに納付して賄う。標準的な家庭で月額約二十円の負担である。
世界では、米国とフィンランドで建設地が決まっただけで、最終処分を始めた国はまだない。特に米国では処分地をユタ州のヤッカマウンテンに決めた際、ユタ州知事が強く反対した。世界第二の原発大国フランスでも八〇年代に現地調査を手掛けようとして反対に遭い、最終処分にかかわる審議が〇六年まで棚上げされた経緯がある。
日本でも、応募しようとする自治体での住民の合意形成には相当な時間がかかりそうだ。周辺自治体の同意も必要で、難航も予想される。地域の遠い将来まで左右する計画だけに、冷静で慎重な判断が求められる。
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