中国新聞

   すてきなくつ


 ピパって、どものころのパパのことだよ。

 世界でいちばんすてきなくつってってる?

 それはね、だれのにもぴったりだ。それをは、最初はち ょっとびっくりする。そのつぎに、うふふってって、それからと ってもうらやましそうなになる。そんなくつだよ。

 あのときは、がずーっとふりつづいていた。うちのなかばっか りじゃつまらないから、ピパはかさをさして、ぐつはいて、いつ もの公園った。

 すぐにでもやみそうな、こまかいだったのに、なかなかやまな かった。それに、たまりだらけの公園には、だれもいなかった。  ピパはたまりをみつめていた。つぶがおちると、つーん、 つーんとあっちこっちにができるのがおもしろかった。するとそ こに、アメンボがやってきて、チョン、チョンってをスケー トしはじめたんだよ。

 ピパはアメンボにいった。
「やい、アメンボ。そんなにがうれしいか。やい、アメンボ。お まえのくつとぼくのくつ、とりかえっこしないか」

 すると、アメンボが「いいよ」っていってくれた。

 さっそくピパはぐつをぬいで、はだしになって、たまりにっていった。アメンボみたいにはすべれなかったけど、た まりののどろは気持ちよかった。ピパはでどろをかきまわし た。ホイップクリームくらいなめらかになるまで。

 すると、アメンボがピパのていった。

 「おまえ、いいくつはいてるな」

 ピパはぐつをにぶらさげて、はだしのままでうちにかえっ た。すれちがうはみんなピパのて、びっくりして、うふふ ってわらって、うらやましそうなになった。

 そう。どろんこが世界でいちばんすてきなくつなのさ。

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