中国新聞

   ぬけのまんなか


 ピパって、どものころのパパのことだよ。

 ピパがくらしていたには、ぬけがたくさんあった。ピパがい つもっていたのはアリマさんちとササキさんちの。ここを ると公園にすぐける。


 あの駄菓子屋さんは、そののまんなかにあった。なおだっ た。夕方電信柱電灯かりがつくと、そのおく。お にいるのはおばさんだけ。くていかみのろでたばねてい て、それがネコのしっぽみたいだった。

 そのぬけはせまくて、どももすれちがうことができなかっ た。ある、ピパがそのいていたら、あっちからがや ってきた。

 そのは、ピパがあともどりするのがあたりまえっていうように ずんずんんできた。ピパも、ぜったいはゆずるもんかって、ず んずんいてった。

 ところが、ぶつかるとったら、すれちがってしまった。なにが なんだか、わからなかった。ひょっとしたらあの、ピパののあ いだをくぐったのかもしれない。そのとき、ピパのに、なにかふ んわりしたものがさわったから。



 きのう、パパはそのってみた。たしかにアリマさんちとサ サキさんちのあいだに、ぬけはあった。でも、ども一人やっと れるだから、おなんか、あるわけがない。

 おかしいなぁっていながらのぞいていたら、ぬけのまんなか で、かがキラリとった。ネコのだった。そこには一匹ネ コがいたんだ。

 そのネコがパパのて、「ニャア」と一声いた。それがパ パには、「まあ」にこえた。

 「まあ、あんた、あのときのだね」

 そういっているようにこえた。あれはネコのおだったのかな ぁ。

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