亡き子思い石を積む 佐渡・賽の河原 | '02/1/22 |
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無数の石が積まれ、たくさんの地蔵が安置されている「願の賽の河原(新潟県両津市) |
佐渡の北端の入り江に、「願(ねがい)」という名の小さな集落がある。
集落のはずれから、海岸沿いに岩場を三百メートルほど歩くと、洞くつが現れる。中には
数百の地蔵がまつられ、周りには無数の小石が積み上げられている。
「願の賽(さい)の河原」。ここに来ると、先だったわが子の声が聞こえる、といわれる。
「一重(いちじゅう)積んでは母のため」。石を積む子のために、親は地蔵に手を合わせ、
人形や風車を供えてめい福を祈る。
思慕の重さを物語るのだろうか。河原の物を持ち帰ると「夜、まくら元がガヤガヤと騒がし
く、眠れなくなる」という。
静寂に包まれた洞くつに、波の音が流れ込む。海のかなたではテロが起き、報復が続く。国
内でも、子どもたちを巻き込む事件が後を絶たない。
最愛の者を失った人々の深い祈りが満ちる。島の果ての霊場。地蔵は無言で立ち続ける。
(写真と文 米倉正雄=新潟日報)
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