三平汁 海の男支える熱い一杯 | '04/11/15 |
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「全部、ここの材料だよ」。慣れ親しんだ味を紹介する井川さん(右)
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「なんにもないから、三平するかい?」。塩漬けの魚と野菜を煮込んだ三平汁は、あり合わせの材料で手軽に作れるのも魅力だ。
発祥の地とされる北海道南端の松前町。主婦井川文子さん(78)がぬか漬けホッケの三平汁を作ってくれた。家の前に広がる浜から拾ってきた新鮮なコンブ、野菜や魚は自分の畑で作ったか、友人からもらったもの。すべて自家製だ。
ホッケにしみ込んだぬかが混ざり絶妙のだしとなり、とれたてのジャガイモやネギの風味が舌の上にふわりと広がった。
三平汁はニシン漁場から生まれ、ぬか漬けニシンと野菜を煮込んだものが始まりとされる。かつてニシンは、早春の短期間で大量の漁獲があり、一部は出荷せずにぬか漬けにして保存するのが一般的だった。漁師たちが冬場は体を温めるため、夏場は汗で失われた塩分の補給のためもあって、一年を通じて食べるようになったという。
北海道は広く、四季の区別もはっきりしている。使う魚や野菜は地域や季節によって多様になった。サケやタラも使うし、野菜では春はフキ、夏はササゲ、秋にはカボチャ、そして大根の葉も。
戦後間もなく青森から嫁いだ井川さんが教わった中には、酒かす入りもあった。「沖から帰ってきた男たちの凍えた体には、これが一番さ。ほんと、あったまるんだよ」
ニシン漁で栄えた集落も、今は漁師は数戸だけ。「寂しくなったね。でも、三平の味だけは変わらないよ」。漁師の妻のプライドがのぞいた。
(北海道新聞)
<メモ>一口大に切ったジャガイモ小七個、短冊切りのニンジン一本と大根三分の一をコンブだしで煮る。ジャガイモが柔らかくなったら、ぬか漬けホッケ三本をぶつ切りにして入れ、煮込む。汁に塩味が出てきたら出来上がり(四、五人前)。
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