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アクササ巻 三角もち、山里の保存食'04/11/17

10年たってもアクササ巻作りは難しいと話す田宮さん
おふくろの味 北から南から  ササの葉をむくと、透き通った黄金色のもち米が顔をのぞかせる。きなこをつけて口に入れると苦みといっしょに、硫黄のようなにおいが広がった。雑木やわらを燃やしてできる灰で作った上澄み液の「あく汁」を使ったためだ。

 アクササ巻は、新潟県最北部の山形県境にある山北町で、かつては端午の節句を祝って、大半の家庭で作っていた。

 あく汁四、五合にもち米一升を一晩浸す。水切りしたコメを、ササに詰め、三角に巻き、二、三時間、あく汁を加えた水でゆで上げる。

 あく汁をなめるとぴりっと舌を刺激した。身近で採れるササ自体に殺菌効果がある上、灰の持つアルカリ成分にも殺菌効果があるという。山里の知恵が凝縮した郷土の保存食といえようか。

 「今、作れるのは私たちぐらいの世代まででしょうね」と同町小俣の田宮伊津子さん(62)。十年ほど前から、しゅうとめに代わり、見よう見まねで作り始めた。

地図  手際よく三枚のササを折り曲げ、中にもち米を入れる。田宮さんは「作る人それぞれうるかし(浸し)、ゆでる時間も違って同じ味や色はない。私も作るたびに違います」と苦笑いした。

 しゅうとめからの味を受け継いだ田宮さんは「若い人にも作り方を教えてあげたい」と話す。年に五回ほど、東京都と埼玉県に住む娘と孫に送る。「娘にとっては故郷の味であり、孫からは『三角のおもち』と珍しがられているみたい」と目を細める。アクササ巻が、故郷を離れた家族を結んでいる。

(新潟日報)

<メモ>もち米をササ二、三枚で正三角形や二等辺三角形の形に巻く。山北町山熊田で体験メニューを提供する「さんぽく生業(なりわい)の里」で注文販売している。五個一組で税込み四百二十円。送料別途。TEL0254(76)2115。


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