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しもつかれ 残り物煮る庶民の知恵'04/11/18

お菓子の代わりにお茶請けにも出される「しもつかれ」
おふくろの味 北から南から  「七軒のしもつかれを食べると中風にかからない」。こんな言い伝えも残っているのが、栃木県など北関東の「しもつかれ」。正月の塩ザケの頭、節分の大豆の残り、大根などを酒かすと「ごった煮」した栄養価の高い郷土料理だ。

 食べる時は、ちょっと腰が引ける。具をかき混ぜ長時間煮込むので、見た目はドロドロ。しかし「残り物を使い切る庶民の知恵」と県指定「とちぎふるさと名人」の田村東江さん(70)=上三川町=はいう。

 もともとは節分の後の初午(うま)の日に、赤飯とともに稲荷神社に供えて、家内の無病息災などを願った。旧暦二月初午は現在の三月中旬で野菜の端境期。「大根や大豆しかないため、供物になったのでは」と栃木県立博物館の柏村祐司学芸部長(59)は推測する。

 地域や家庭によって材料が少しずつ違い、原形といわれる大根と大豆だけの地域も。「県内に造り酒屋ができた江戸中期から酒かすを入れるようになるなど、神様に供える特別な料理とされてきたのでは」と話す。

地図  しもつかれに、欠かせないのが、目の粗い大きなおろし器。「鬼おろしといってね。明治生まれの祖父の手作り。三代使い続けているんですよ」と田村さん。これですった大根を入れるのが特徴の一つ。庶民家庭で延々と作り継がれてきたことを示す証しでもある。

 若い夫婦の家庭では作られなくなってきたともいわれるが、年中売っているスーパーもある。酒のつまみとしての人気は根強い。

(東京新聞)

<メモ> 「しみつかり」「すみつかり」ともいう。鎌倉時代の説話集に出てくる、いった大豆に酢をかけたスムツカリが語源という説が有力。大きな鍋で一度に、塩ザケの頭、大根三キロ、ニンジン三百グラム、油揚げ二枚、大豆百グラム、酒かす二百グラムを入れるのが目安。


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