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さばずし 海の幸 祭りのごちそう'04/11/24

「脂の乗ったサバと新米。さばずしは秋が特においしい」と話す岩崎さん(左から2人目)たち
おふくろの味 北から南から  竹の皮の包みをほどくと、つやつやと金色がかって光るサバの青い背が現れた。脂の乗ったサバと上品なすし飯の味が口の中いっぱいに広がる。

 「子どものころ、お祭りの日のごちそうは、必ずさばずしでした。近所のおばさんが、二十本も三十本も作って皆に振る舞ってくれるのが楽しみやった」。京の家庭料理を伝える「京都食べもの文化研究会」の主婦岩崎知子さん(56)=京都府長岡京市=は、すし飯をざっくり交ぜながら話す。

 海が遠い京都の街では、かつて、さばずしは貴重な海の幸だった。福井県小浜の港で水揚げされた真サバをすぐに開いて塩をする。若狭から近江・湖西の山あいを抜ける「鯖(さば)街道」を経て京へ運ばれる間に身が締まり、一段とおいしさが増す。特別な食材だけに、春や秋の社寺の祭りなど「ハレの日」を代表する料理になった。

地図  京都市内でも、家庭では作らず、仕出屋に注文するという家も少なくない。だが、「家で作るとサバも分厚く、ご飯もずっしり詰められる。前日に作っておけるので、手土産にすると喜ばれますよ」と岩崎さん。一日おいた方がおいしいので、遠方の知人に送ることも。焼きサバ用ではなく、さばずしに使う分厚い身の真サバは、関東の鮮魚店では売っていない所も多いという。

 同研究会主催の料理講習会でもさばずしは特に人気が高く、常に定員の倍以上の応募がある。代表の河本ひさ子さん(68)は「お客さまをもてなす時に『うちで作ったんよ』と言えたら、うれしいでしょう」とほほ笑んだ。

(京都新聞)

<メモ> すし飯は米カップ三に昆布だし六三〇CC(新米は六〇〇CC)、酒大さじ二を加えて炊く。サバ(一匹)は三枚におろし、腹骨をそぎとり、中骨を丁寧に抜く。酢、砂糖、薄口しょうゆを合わせたつけ酢に四十分以上つけ、身を締める。


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