イワシのぬかみそ炊き 臭み消し熟成のうまみ | '04/11/29 |
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「イワシのぬかみそ炊きがあれば、はしが進む」と友人と昼食を楽しむ岩崎さん(右)
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においは少々刺激的だが、煮汁をたっぷり含んだイワシが舌の上でとろける。かみしめていると、サンショウの実がコリッ。熟成したぬかの香りがほのかに残る。
イワシのぬかみそ炊きは、玄界灘で捕れた旬のイワシをしょうゆやぬかみそで煮込む。「何杯でもいけるでしょう」。こう言いながらお代わりのご飯をよそう北九州市小倉北区の主婦岩崎芳美さん(83)は、代々、百年にわたって受け継いできたぬかみそを使う。
一帯は旧小倉藩の城下町。藩主の好物だったことから、ぬか床が広まった。魚をぬかに漬け込み、焼く料理法もあるが、ぬかみそ炊きでは、ぬかそのものを調味料として使う。ぬかの香りが青魚の臭みを消し、ぬか床はふだん漬物用に使われているので、凝縮された野菜のうまみも加わる。
同市は明治時代、八幡製鉄所が操業し、鉄の街として栄えた。当時、玄界灘で大量に捕れたイワシは安価な大衆魚。イワシのぬかみそ炊きは、大家族の食卓に並んだ。産炭地の福岡県筑豊地区でも好まれ、日本の近代化を支えた「おかず」だ。
最近では漁獲量が激減し、イワシの値段も跳ね上がった。においや手間が敬遠され、ぬか床を持つ家庭も減った。
それでも小倉の台所・旦過(たんが)市場では五、六軒がぬかみそ炊きを売っている。漬物店宇佐美商店の宇佐美久子さんは「発酵を生かした保存食でもあり、冷蔵庫に入れておくと十日は持つ。温めなおす度に、味も深まっていくんですよ」。庶民に愛された理由を教えてくれた。
(西日本新聞)
<メモ>
水、しょうゆ、お酒を鍋に入れ、イワシに火が通った後、ぬかみそを加えて煮込む。好みで砂糖を入れる家庭も。長く煮込むほど日持ちがよくなる。小イワシだと骨ごと食べられる。イワシの代わりにサバを使うこともある。
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