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変わらぬ路地裏交流 京豆腐の行商(京都市)'02/9/9

豆腐を積んだリヤカーを自転車で引っ張り、細い路地を巧みにすり抜けていく(京都市下京区)
道の辺に食あり  京町家の面影を残す路地裏に、京豆腐を売り歩く昔ながらの行商の姿が溶け込む。久保田豆腐店の四代目、久保田岸郎さん(74)の日課だ。

 久保田さんが豆腐の行商を始めて、ちょうど半世紀になる。「プァープー」。ラッパの音を合図に、器を手にした主婦が「豆腐屋さーん」と声を掛けて走り出す。「きょうは間におうたわ」と笑顔で豆腐を受け取った。

 「コミュニケーションがあってこそ豆腐は売れるんでっせ」。流れる汗をぬぐう表情が緩んだ。良質の地下水を使った豆腐の味には自信がる。

 京都の町並みも日々、開発が進んで変わり続ける。それでも、祖父が歩んだ道をなぞるように引くリヤカーの先には、今も変わらずお得意さんがいる。都心の騒々しさをよそに、リヤカーのきしむ音が路地に響いた。

(写真と文艶沢圭介=京都新聞)
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