中国新聞オンライン
東京湾フェリー つかの間「宇宙遊泳」'02/9/15

絶え間なく行き交う大型船の間を縫うようにして航行するフェリー。航跡が浦賀水道に走る=60分間露光(千葉県鋸)
渡しの風景  闇に抱かれた海。往来船が発する灯火はかなたまで連なり、その明かりが次々と迫っては遠ざかる。「まるで宇宙船に乗っているみたい。つかの間のぜいたくな気分」。甲板で潮風を浴びながら乗船客がつぶやいた。

 東京湾の玄関、三浦半島と房総半島に挟まれた浦賀水道は、一日に五百隻以上が往来する過密航路。ここを横切って人と車を渡しているのが東京湾フェリーだ。

 行き交う船のすき間を縫う緊張感。「特に夜は怖い。レーダーと往来船の灯火を見て瞬時に針路を決める。航法を無視する船もあって、至近距離で相手をかわしたこともある」と、仲山富士船長(54)は言う。

地図  自動車専用道「東京アクアライン」の開通で利用者は減り、昨年は往時の半分、百五十万人にまで落ち込んだ。浦賀水道に横断道路を建設する計画もある。フェリーは新たな経営の航路を模索しつつ、きょうも「宇宙」を進んでいる。

(写真と文・戸上航一=東京新聞)


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