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十石舟 水面に歴史の町伏見'02/9/18

秋空の下、ゆったり進む十石舟。川面に映る酒蔵が風情を添える(京都市伏見区の宇治川派流)
渡しの風景  ゆるやかに流れる川面に、柳の並木や白壁の酒蔵が映る。滑るように進む舟の軌跡が、波紋を広げ日差しを受けてきらめく。京都市伏見区の宇治川派流と濠(ごう)川をめぐる十石舟は、情緒ある船旅に乗客をいざなう。

 江戸時代から明治時代末ごろまで、十石舟は京と大坂の中継地だった伏見で、物資や人を運ぶ渡し舟として活躍した。酒どころで有名な伏見には、坂本龍馬が定宿とした寺田屋や酒蔵を使った月桂冠大倉記念館など、今なお往時の面影が残る。

 十石舟は一九九八年、伏見観光協会が復活させ、現在は地元のまちづくり会社「伏見夢工房」の手により定期運航される。

 「新選組」ブームも手伝って、訪れる人の増えた伏見で、歴史ロマンに風情を添える新たな観光名物として定着した。

地図  「これからは紅葉、春には桜がええんですわ。こんな景色ずっと残さなあかんなぁ」。伏見に生まれ育った船頭は、誇らしげに法被を羽織った。

(写真と文・山本陽平=京都新聞)


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