音戸の瀬戸 日本一短い定期航路 | '02/9/20 |
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夕暮れの音戸大橋をバックに、人や自転車を乗せて音戸町側へ向かう渡し船(広島県の音戸の瀬戸)
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夕日が傾き、空が赤く染まり始めた。家路を急ぐ人が桟橋に並ぶと、向こうからポンポンと音を響かせながら木造船が近づいてきた。広島県の呉市警固屋と安芸郡音戸町の間、約百二十メートルを一、二分で渡る。エンジン付きの定期航路では、日本で最も短い航路の一つ。
平清盛が一日で切り開いたとの伝説が残る「音戸の瀬戸」。潮の流れが速く、船の往来も激しい。江戸時代に始まった渡しは、今も通勤通学の足として現役だ。
「小学生のころ、作文で渡し船の船長になりたいと書いた。あこがれだったんよね」。年始を除く毎日、二十五年間往復し続けている船長の蒲原新司さん(55)が笑顔で教えてくれた。花本智博さん(44)と交代で、朝五時半から午後九時までかじを握る。
時刻表はない。待合所の壁には、「大人七〇円、小人四〇円、自転車九〇円、バイク一一〇円」の料金表が小さく掲げられていた。
(写真と文・荒木肇=中国新聞)
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