球磨川の渡し 手こぎ舟 通学の「足」 | '02/9/25 |
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朝焼けに染まった球磨川をゆっくりと進む渡し(熊本県球磨村)
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午前六時。朝焼けの反映で水面が赤く染まった球磨川を、渡し舟が左右に小さく揺れながらゆっくりと進む。
熊本県球磨村の楮(かじ)木地区。毎朝、対岸のJR肥薩線瀬戸石駅の始発に間に合うよう高校生二人を乗せ、船頭の求广(くま)川八郎さん(77)が櫓(ろ)と竿(さお)で木製の舟を操る。
同県人吉市の観光名所「球磨川下り」の終点から十五キロ下流。一帯の流れには、日本三大急流の一つとして知られる球磨川の面影はない。周囲の山にかかった朝もやの動きのようにゆるやかだ。
川幅は約八十メートル。渡しの時間はわずか三分ほどだが「この間、学校のことなどで話が弾む」という。櫓をこぐ音と若い声が交錯する。
求广川さんが渡しを引き継いで二十四年。当初は利用する人も多かったが、マイカーの普及などで”定期客”は高校生だけになった。「それでも、利用者がある限り続けたい」。昔と変わらぬ川の流れに目をやった。
(写真と文・佐藤桂一=西日本新聞)
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