中国新聞オンライン
手回しオルガン 紡ぐ鳥の歌 森の風'03/6/16

手回しオルガンの周りではだれもが主人公。「コンクリートの上でも、森や風を感じてくれたら」
技 新世紀の匠たち  素朴な音色が森に流れる。風のメロディーと子どもたちの歓声が木漏れ日に溶け合う―。

 列島南北の植生が交じり合い、豊かな樹林が広がる北海道厚沢部(あっさぶ)町。世界でも数少ない手回しオルガン職人の谷目基さん(36)が工房を構える。

 ハンドルを回すと、ふいごに空気がたまり、風を送り出す。風は厚紙でできた楽譜の穴を読み取り、木笛を鳴らす。風に力を得たからくり人形も右に左に体を揺らす。

 北海道産の木を使い、ネジ以外はすべて手作り。設計図に頼らず、一つとして同じではない「生きている」木に向き合う。森から聞こえるクロツグミの鳴き声に「僕の先生なんです」。

 森を吹き抜ける風。そのさまざまな向きや強さ、表情を表現したい。「人間の発想ではない、自由なメロディーを」

(写真と文・鮫島晶子=北海道新聞)


Menu Next