中国新聞オンライン
手縫い針 ミクロ勝負 狂いなし'03/6/25

最終検査でゴムに突き刺さる針の束。まるで花のように見える
技 新世紀の匠たち

 金色に輝く針、針…。びっしりと突き刺さった束は、花を思わせる美しさだ。一九一八(大正七)年創業の萬国製針(広島市西区楠木町)の手縫い針は、全国シェア約九割を誇る。

 直径一ミリ足らずの世界に技術が詰まっている。一分間で千本以上に穴を開け、先をとがらせる研磨機械の調整や元になる金型の製作などに、寸分の狂いも許されない。広島の針がトップの座を守る要因でもある。太さ〇・三五ミリの棒に、〇・一七ミリの穴を開けることもできる。

 針作りは、ドラム状に巻かれた一本の鋼材を延ばすことから始まる。カットし、砥石(といし)で何度も磨き、布通しがスムーズになるようメッキする。最後は人の目が頼りだ。上下した束をゴムで挟み、刺さり具合やルーペで製品をチェック、先をそろえてこん包する。

 年間一億八千万本の手縫い針を出荷。最近は注射針やイカ釣り針のほか、マイナスイオンを発生させる特殊な電極針など、さまざまな注文にも対応している。広島が世界に誇るミクロの技術は、日常生活でひそかに貢献している。

(写真と文・荒木肇=中国新聞)


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