白砂青松 復活に挑む
世界遺産の厳島神社で知られる広島県宮島町で、白砂青松の浜を取り戻そうという市民活動が芽生えている。海岸での清掃活動のほか、子どもたちに環境学習の場を提供する各種プログラムも開発。今年1月に施行された自然再生推進法を活用した海岸再生も検討している。
環境保全グループ「みやじま未来ミーティング(MMM)」。県などが宮島で開いた海岸保全ワークショップの修了者有志が昨年4月に結成した。県内の会社員や自営業、大学生など多様な市民約30人が集い、地元住民も加わる。
■市民に環境学習
活動は、島の東部にある腰細(こしぼそ)浦の再生、環境学習プログラムの開発、観光客にごみを持ち帰ってもらう運動の3本柱。環境学習では、干潟やプランクトンの観察、藻塩づくり体験、植物観察など子どもや市民向けのプログラムを展開している。
「宮島の自然を守るには、未来を担う子どもたちとの連携が不可欠。この活動を通じて、自然を愛する心を育てたい」。メンバーの建築設計士三谷昌一さん(57)=広島県大野町=は宮島町出身。思い入れは人一倍強い。
腰細浦は1950年代半ばまで、白い砂に青い松が映える浜だった。夏場は海水浴客でにぎわった。しかし、砂が流出し、松の根もむき出しに。メンバーは、埋め立てなどによる潮流の変化が主な原因とみている。
漂着したペットボトルなども散乱。定期的に拾い集めているが、11日の清掃時にも多くのごみが打ち上げられていた。「きりがない」。参加者からため息が漏れた。
さらに、砂の上にはおびただしいタイヤ痕。2カ月前、車両が入れないように置いた木の切り株は、すべて投げ捨てられていた。「砂地の植物が踏まれて枯れる。せっかく風などでできた砂の山や模様も壊してしまう」とメンバーは悔しがる。
■「推進法」を視野
こうした活動を発展させ、効果を高めるため、MMMは地域主導で自然環境の保全や再生が進められる自然再生推進法の活用を検討中。海岸に砂を入れたり、松を植えたりする再生事業への適用を目指す。
同法で活動主体と想定する地元住民らも注目する。宮島漁協職員の小田成則さん(57)は「浜の景観を取り戻すため、協力したい」と前向きだ。12月には、住民も加わって腰細浦清掃を行う。
県内で環境教育や地域リーダー育成事業を進めている県環境保健協会の上田康二・地域支援室長(44)は「瀬戸内海を守るには、多くの住民が海に近づき、主体的に活動する必要がある。MMMの取り組みはその試金石。人と海のつながりを取り戻すモデルケースになるよう支援したい」と期待している。
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