100年かけ緑化推進
自然海岸がほとんど見当たらないほど埋め立てが進んだ阪神地区の臨海工業地帯で、既存の埋め立て地を利用した緑地・親水空間づくりが始まった。重厚長大からソフトなどへの産業構造の変化で遊休状態になった埋め立て地を、憩いの場に切り替え、再利用する試み。100年もの長期計画である。
兵庫県が打ち出した「尼崎21世紀の森」構想で、対象地域は尼崎市を東西に貫く国道43号の南側約1000ヘクタール。同市は大阪府と接し、阪神工業地帯の一翼を担うが、埋め立てで自然海岸は消滅した。構想では、遊休地などを活用し、自然と共生した都市再生を目指す。
キーワードは「森」。阪神大震災後、復興住宅用に県が購入した埋め立て地29ヘクタールを拠点地区と位置付けた。住民や企業の協力を得ながら、まず拠点地区から緑化を推進。自然と調和したまちづくりを目指すほか、エコビジネスなど新産業誘致、循環型ライフスタイルの形成など幅広い。その中で、失われた瀬戸内海の環境の改善や創造も盛り込んだ。
「自然海岸がないわが市にとって、ここは住民が海に近づける貴重な場になる」。担当課長の本井敏雄さん(52)が指さした拠点地区の整備イメージ図には、野鳥観察や人工干潟、人工磯、海浜などが描かれている。尼崎港で国際エメックスセンターが実施する環境修復の研究成果を活用する。
尼崎、西宮、芦屋市の阪神エリアの臨海部の低、未利用の埋め立て地などは約320ヘクタールとみられる。「これまで環境に与えたつけが重いからこそ、役割を終えた遊休地を自然豊かな環境に戻す発想が必要だ」と本井さん。人と海を隔ててきた埋め立て地の役割が変貌(へんぼう)しつつある。
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