タイトル「ひろしま 都心のあした」
  パート 1  6つの遺伝子

    5.にぎわい


「本通りアーケード」地図


 ■遊・食多彩 往来の求心力

 本通り商店街(広島市中区)西端に年の瀬、人だかりができた。八百屋さん「はぐま」。二十年間商った広島センター街地階がそごう広島店と一体化したのを機に十月下旬、移転した。アーケード中ほどの「川口商店」でも、いりことちりめんが飛ぶように売れた。
写真「本通り商店街」
平日も多くの人が行き交う本通り商店街。街歩きの楽しみは、工夫次第でもっと増える

38万の人通り

 本通りは広島城築城に伴い生まれた。「商売は世につれ」とはいえ、バブル崩壊以降の変わり様は目まぐるしい。老舗は廃業したり、二階に追いやられた。今は携帯電話店、ドラッグストア、コーヒーチェーン…。派手な外装に、呼び込みやBGMがけたたましい。

 「じゃから余計に、広島らしい一次産業の製造直売が新鮮に映るんでしょう。お客に『頑張って』と励まされる」。一昨年秋、広島県音戸町から進出した川口商店の川口了一社長(51)が笑う。

 本通りは、平日延べ三十八万人が歩く。実人数は十万人近い、と商店街関係者はみる。十代であふれる東京・渋谷センター街が十一万三千人だから、路面の商店街では全国有数の人通りと言ってもよいだろう。

 紙屋町、八丁堀という両核を、ほどよい長さのアーケード回廊が結ぶ都心構造が、人を集める一因である。はぐまも川口商店も、通行量にひかれて出店した。地方共通の悩みである空き店舗は一つもない。

有数の集積度

 日本政策投資銀行は、広島都心二キロ圏の都市型集客サービスは、札幌、仙台よりもバランスが取れ、福岡に迫る充実度と分析する。理美容、電器、書籍、映画館や、中央通りから流川地区にかけてのスナック、お好み焼き、焼き肉などの店舗数は四都市で最多を誇る。

 平和記念公園にほど近いはぐまには、外国人観光客がぶらりと入ってくる。野菜の品ぞろえを興味深げに見て、リンゴ一個買って行ったりする。

 しかし、こんな光景は珍しい。平和記念公園には年間百万人以上訪れるのに、本通り・八丁堀には六人に一人しか立ち寄らない。「買う」「味わう」といった行為は、都心のにぎわいを支える大きな要素だが、せっかくの集積も、来訪者には楽しんでもらっていないのが実情である。

付加価値求め

 半官半民の広島お好み焼きブランド化推進委員会が昨年暮れ、都心の店を網羅した来訪者向けの無料地図を作った。取材に応じた九十七店すべての位置、電話番号、営業時間を載せた。

 お好み焼きは広島名物の一番手ながら、限定マップは初の試み。編集したひろしまタウン情報の澤田浩さん(28)は「はじめの一歩」と喜ぶ半面、客観情報だけでは「お好みファン」は作れないと感じている。

 今の人が求めるのは、味や素材、店主の個性など「付加価値のある限定情報」。紹介した店が好みにはまれば、「近隣の用事のついでに」足を延ばしたり、食べ歩きを目的にしたりするリピーターが誕生する。

 広島では、名所見物に次いで、グルメや街歩きを楽しみたい―。中国運輸局の全国アンケートでもこんな結果が出た。買い物や飲み食いの場はそこそこある。情報の質や出し方、回遊性を高める工夫をすれば、来訪者の満足度は上がり、「来てよし」の魅力も増す。

2004.1.9