歩行者と自転車、車の「歩車摩擦」に、広島市の都心がきしんでいる。そぞろ歩きの楽しさを取り戻す手始めに「歩車分離」の社会実験が二月二日から、全国有数の人通りを誇る本通りかいわいで始まる。「都心のあした」が見えるのか、パート2では社会実験をフォローしてみる。
「車も自転車も、わがもの顔じゃからね。あの道は、ひどい」。高齢者や障害者の外出支援グループ代表、熊谷憲二さん(67)=佐伯区=が嘆くのは、中区の本通りと交わる大手町通りだ。
二〇〇三年三月の市アンケートで「都心で最も歩きにくい通り」に挙がった。市民の採点は、五段階評価で二・六―。最低だった。
平和大通りとバスセンター周辺をつなぐ大手町通りは、一日ざっと二万人の往来がある。一方、休日はその三倍以上の人出で、さらに込み合う本通りには、「最も歩きやすい通り」の折り紙が付いた。
「本通りには正午から八時間、歩行者専用ゾーンになる安心感がある」と市道路計画課。その「安心感」を広げて、と願う市民の回答が、社会実験につながった。
実験は二十九日まで一カ月間。今後も実験を重ね、向こう五年間で都心づくりの方向付けをする。市民の参画と評価が流れを変える。
■ヒヤリ増加 大手町通り
広島市中区の書道講師柏六雄さん(72)は、もう三年近く、本通りの西端にあたる紙屋町地区に寄りついていない。二〇〇一年四月、地下街シャレオの開業からだ。地下開発に併せ、紙屋町交差点から横断歩道が消えた。「階段の上り下りが大変ですからね」
一日に約十三万人が行き交っていた都心随一の交差点。横断禁止で人通りが減り、残った人波は五十メートル脇の歩道にそれた。そこが、大手町通りの北口にあたる。本通りに行くにも、平和記念公園に回るにも近道だ。通りの混雑は、目に見えてひどくなった。
シャレオ開業後の〇一年十月、市調査では大手町通りの通行量(歩行者と自転車)は日中に一万九千人前後。沿道には、夕方のピーク時に一時間当たり百台の車が出庫する立体駐車場もある。
人、車、自転車が交錯する大手町通りは、歩くのに気が抜けない。一方通行の道路の両側に、路上荷さばきや駐車待ちの車が陣取る。路上に看板がはみ出し、歩道をいっそう狭める。よけようと寄ると、背後から突然、自転車が脇をすり抜け、肝を冷やす。
今回の社会実験で、大手町通りは土・日曜と祝日、幅十メートルの道の両側にカラーコーンを並べ、歩行者と車・自転車とを分離。店舗に配送、集荷する業者の路上荷さばきは休日に限らず、平日も自粛時間帯を延長する。
実験一年目の今回は、歩行者と自転車利用者との折り合いを目標に選んだ。自転車の敵視、排除ではなく、共存を図る狙いである。「自転車族ウエルカム」の町をめざす、一帯の商店街は、ある実験を試みる。「買い物駐輪券」である。
2004.1.29
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