広島市中区の並木通りの会社に勤める岡真奈美さん(39)は、都心内の取引先を自転車で回る。道すがらの店で、目に留まる商品もある。「よく見たいと思っても、お店の奥だったら『ま、いいか』と通り過ぎる。自転車をちょこっと止めるスペースがないですもんね」
都心の自転車等放置規制区域内の駐輪場は、市営が七カ所、計四千五百六十台。基町クレド(約千台)、広島パルコ(約九百台)など民間も含めると、計六千九百六十台が収容できる。
昨年五月の市の調査では、同じ日の同じ時間帯に区域内の駐輪場に止まっていた自転車は計五千六十三台。放置自転車は千八百五十五台。市は合計の六千九百十八台を都心への流入台数ととらえ、駐輪場はおおむね足りているとみる。
数字上は充足しているようにみえても、街のあちこちに自転車は止まっている。「路上に止める人間は決まっとるよ。私らを見たら逃げて、少したったら様子を見に戻ってくる」。市の委託で駐輪誘導にあたる河内昭さん(59)がこぼす。
市の調べでは、路上駐輪の理由は、43%が「わずかな時間だから」、次いで「駐輪場が遠い」(18%)。多くの人が自転車を止めた近くで用事があり、半数以上が目的地に駐輪場がないと答えた。
区域内の市営駐輪場は、どこからでも三分程度歩けば着く二百メートル圏に整備してあると市は言う。それでも、小規模な駐輪場がたくさんある方が、利用者にとってはうれしい。
社会実験の期間中、コイン式駐車場二カ所を借り上げ、臨時駐輪場にする。本通りに面した大手町一丁目と、本通りの一本北の立町で、九十台、三十台がそれぞれ止められる。既存と合わせ計九カ所の市営駐輪場の利用者は、協力店で買い物をすれば駐輪代が戻ってくる。
実験の検討段階では、歩道に駐輪スペース設置を求める声もあった。しかし違法駐輪の撤去処分との整合性や、歩道の幅が十分でないなどの理由で、実現しなかった。
相生、鯉城、中央通りの歩道(幅六メートル)には、人と自転車の通行を分けるマークを表示する。
自転車を悪者にすることなく、安心して街歩きが楽しめる都心づくりへ、一歩を踏み出せるか。「歩車共存」のルール作りを問う実験が、二月二日から始まる。
2004.1.31
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